【アジア・新興国】タイの生命保険の販売チャネル~バンカシュアランスが急成長

2017年03月21日

(斉藤 誠) アジア経済

■要旨

タイの生命保険市場は近年、右肩上がりの成長を続けている。生命保険が普及する背景には、経済成長や人口増加のみならず、販売チャネルの変化も大きく影響しているが、なかでもバンカシュアランス(銀行窓販)は著しい成長を遂げている。

バンカシュアランスが急速に普及する背景には、監督庁の規制や消費者ニーズの変化、各社の販売チャネル戦略、分かりやすい商品設計など多くの要因が影響しているが、なかでも国民の間に生命保険が浸透する前に、バンカシュアランスが解禁(2002年)になったことが大きい。当時は現在よりも消費者が保険エージェントと比べて銀行にアクセスしやすい環境にあったほか、税制優遇の有無や銀行に対する信頼性の高さなどの要因もバンカシュアランスの販売を後押ししたと考えられる。

バンカシュアランスの人気を追い風に、四大銀行系の保険会社が保険料収入を伸ばしている。この背景には、四大銀行は販売基盤が厚く、多額の預金を抱える顧客を持ち、そして傘下の生命保険会社の商品を独占的に販売していることなどがある。

非銀行系の保険会社は銀行との販売提携を結ぶことでバンカシュアランスを強化する一方、銀行系の保険会社はバンカシュアランスに過度に依存する体質を改善するべく、エージェントを強化する動きもある。またダイレクトマーケティングなど他の販売チャネルの販売実績も伸びており、タイにおいてもマルチチャネル化の動きが見られる。タイでは今後も所得向上や高齢化・核家族化の進展が見込まれ、日本と同様に保障性商品や医療保険、年金保険のニーズが高まると考えられるなか、販売チャネルのトレンドも大きく変化していくことが想定される。

■目次

1―主力の販売チャネルに変化
2―バンカシュアランスの成長要因
3―銀行系の生命保険会社が好調
4―おわりに

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠(さいとう まこと)

研究領域:経済

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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