江木 聡()
研究領域:
研究・専門分野
【参考】気候変動が金融にもたらす影響
「気候変動に関する国際連合枠組み条約(1992)」に基づいて、世界各国は温室効果ガスの排出削減に合意している。ここから低炭素や脱炭素への移行が秩序だって進めば良いが、現在の延長線では実現が困難な排出削減目標を掲げるだけに、産業界の現場では忌避も含めて抜本的な取組みが進まないまま時間が経過していく懸念もある。場合によっては、これ以上の水準は危険となったタイミングで規制がスタートしまうことになりかねない。そうなれば、排出規制に大きな影響を受ける産業セクターに対し投融資を振り向けていた投資家はパニックに陥る可能性がある。投融資を一気に引き揚げる動きが誘発されると、金融市場にシステミックなインパクトを与えてしまうのである。
気候変動自体は自然科学の領域だが、社会にもたらされるインパクトは、多分に政策や規制の発動といった人為的要因によって引き起こされる。システミックなインパクトが本当に起こるかは別にしても、どの程度のインパクトが起こり得るのか客観的に認識すべく、気候変動のリスクに関連する金融セクターのエクスポージャーを明らかにしようとする試みが、TCFDの提言であるといえる。
2――提言の概要
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