ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(2)-2015年度結果-

2017年03月07日

(中村 亮一) 保険計理

1―はじめに

前回のレポート「ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)」では、以前の基礎研レポート「ドイツの医療保険制度(2)―公的医療保険の保険者との競争環境下にある民間医療保険及び民間医療保険会社の状況」(2016.4.4)の中での民間医療保険に関する状況について、2015年度ベースの数値に基づいて報告した12

今回のレポートでは、民間医療保険会社の市場シェア、経営効率及び財務面の状況等について報告する。
 
1 ドイツの医療保険制度全体の概要及びその中での民間医療保険の位置付けや各種の制度の具体的な内容等については、基礎研レポート「ドイツの医療保険制度(1)~(3)」を参照していただきたい。
2 以下の数値について、ドイツ保険協会(GDV)の「Statistical Yearbook of German Insurance 2015」及び民間医療保険連盟(PKV)の「Financial report for private healthcare insurance 2014」からの数値を多く使用しているが、両者の数値は必ずしもベースが同じにはなっていない。なお、PKVをデータ・ソースとするGDVの資料についても、GDVの資料に基づくとしている。関係団体からの2015年度の公表資料において、2014年度以前の数値の修正等も行われている。
 

2―民間医療保険会社の状況-市場シェア等-

2―民間医療保険会社の状況-市場シェア等-

ここでは、民間医療保険会社の市場シェアの状況について報告する。

1|会社数
2015年度末で47社(2014年度末も47社)の民間医療保険会社が存在しており、会社数では、保険会社全体の1割弱を占める形になっている。
2|会社形態
2014年度末の47社のうち、24社が株式会社で23社が相互保険組合3である。前者と後者の保険料ベースでの市場シェアはそれぞれ57.3%、42.7%となっている。

10年前との比較では、株式会社の数は減少し、相互保険組合の数は変化していないが、保険料では、株式会社が若干シェアを高めている。
3|会社のシェア(市場の集中度)
上位会社のシェアは、保険全体の場合に比べて高く、より集中度が進んだ市場となっている。

外資系会社のシェアは13.6%と、保険全体の場合の17.4%に比べると低い水準となっている。
4|医療保険会社
2014年度における医療保険各社の収入保険料及び被保険者数は、以下の通りとなっている。
 
3 英語の「mutual insurance association」の翻訳であるが、「共済組合」との翻訳も考えられる。
 

3―民間医療保険会社の状況-経営効率等-

3―民間医療保険会社の状況-経営効率等-

ここでは、民間医療保険会社の各種の経営効率の状況について報告する。

1|損害率・収益率
保険料に対する給付額の割合を示す「損害率(Damage ratio)」は、事業年度によって変動はあるものの、ほぼ80%前後で安定的に推移している。

一方で、総収入に対する保険事業からの財務業績の割合を示す「保険事業による利益率(Result ratio from insurance business activity)」については、ほぼ10%前後で推移してきたが、ここ数年は12%~13%程度と若干上昇している。
その性格上、医療保険制度改正の影響を受ける可能性もかなりあるが、比較的安定的な損害率や収益率を挙げてきている状況にあるといえる。
2|事業費率
事業費率を、新契約費率と維持費率4で見た場合、新契約費率は低下傾向にある。維持費率もほぼ横ばいであるが、若干低下傾向にある。

このように、民間医療保険会社は、事業費効率の改善化を図ってきている。
 
4 新契約費には、ブローカーへの手数料を含む保険契約締結時に発生する全ての経費が含まれる。維持費には、保険契約の維持管理に関わる全ての経費が含まれるが、新契約費と給付金支払手数料等のサービス処理に伴う経費は含まれない。
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