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中国経済:2016年の概況と2017年の注目点~住宅バブル、自動車販売、トランプシフトの行方に注目!
2017年01月26日
(三尾 幸吉郎)
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5.2017年の注目点
2016年の中国経済を総括すると、過剰生産能力の整理や輸出の落ち込みで、中国経済は年初に失速しそうになったものの、(1)国有企業を中心としたインフラ投資の加速、(2)金融緩和に刺激された住宅販売の加速、(3)小型車減税(排気量1.6L以下)が功を奏し、景気は年末にかけて徐々に上向いてきた。即ち、中国政府が実施した景気対策で回復した。2017年に関しては、景気対策の反動や外部環境の変化で景気に下押し圧力が掛かると見られる。具体的には以下の3点に注目したい。
第1に住宅バブルの行方である。中国人民銀行は2014年11月以降6回に渡って利下げを実施、2016年の分譲住宅販売(面積)は前年比22.4%増と急増し、住宅バブル
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は膨張した(図表-12)。これを受けて、金融政策の重点は前述のとおり景気重視から住宅バブル退治へ移行、購入規制を強化するとともに住宅ローン管理も強化された。販売の落ち込みは住宅価格の下落に直結しやすく、急落すればバブルが崩壊する恐れもある。銀行が抱える不良債権が増加する中で
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、個人の住宅ローンの返済が滞るようになれば問題がさらに深刻化しかねないだけに今後の動きが注目される。
第2に自動車販売の行方である。2016年の自動車販売台数は2794万台(前年比13.7%増)と高い伸びを示した。2015年10月に開始された小型車減税(排気量1.6L以下)や2015年夏の株価急落で落ち込んだ反動増が背景にある(1ページの下左図)。小型車に係る自動車取得税は2017年1月1日に5%から7.5%へ引き上げられた。これを受けて中国自動車工業協会は2017年の自動車販売台数は前年比6%増へ鈍化する見通しを示した。前年の伸びをどの程度下回るのか注目したい。
第3にトランプシフトの行方である。米国では"米国第一"を掲げるトランプ政権が動き出した。巨大な貿易赤字を計上する中国に対する風当たりは強まるだろう。筆者は広範囲に高関税を課す可能性は高くないと見ている
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。しかし、グローバル企業がサプライチェーンを見直して、中国にある製造拠点を貿易赤字の小さい国・地域へ移すトランプシフトが起きる可能性は否定できない。ここもと賃金上昇で製造コストが高くなった中国では、海外企業が対内直接投資を減らし、中国企業が対外直接投資を増やす動きがでてきている(図表-13)。こうした動きがトランプシフトで加速すれば、国内投資減少で景気を悪化させかねないだけに今後の動きが注目される。
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住宅バブルの現状に関しては「
図表でみる中国経済(住宅市場編)~住宅バブルの現状と注目点)
」基礎研レター2016-11-01を参照
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不良債権の現状に関しては「
図表でみる中国経済(不良債権編)
」基礎研レター2016-07-15を参照
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米中の貿易関係に関しては「
トランプノミクスと中国経済-中国は「為替操作国」に認定されて深刻な打撃を受けるのか?
」基礎研REPORT(冊子版)2017年1月号を参照
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