(日銀)現状維持
日銀は12月19日~12月20日に開催された金融政策決定会合において、金融政策を維持した。具体的には、長短金利操作(マイナス金利▲0.1%、10年国債利回りゼロ%程度)、資産買入れ方針(長期国債買入れ年間80兆円増、ETF買入れ年間6兆円増など)においてこれまでの方針を維持したが、従来同様、ともに佐藤委員・木内委員が反対した(賛成7反対2)。
声明文では、景気の現状判断を「緩やかな回復基調を続けている」とし、前回の「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」から上方修正した。上方修正は1年7ヶ月ぶりとなる。内訳の項目では、輸出、個人消費、鉱工業生産の判断をそれぞれ上方修正している。
先行きの景気見通しについても、前回の「暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残るものの、その後は緩やかに拡大していく」から、「緩やかな拡大に転じていくとみられる」へと判断を一歩進めた。
会合後の総裁会見において、注目された最近のトランプ相場の受け止めについて質問された黒田総裁は、「追い風かと言われると、(中略)むしろ年の前半に向かい風があったのが、年の後半には向かい風がなくなったということ」と評価。具体的な影響については、「わが国の景気や物価の先行きの見通しについては、今後の金融市場の動向も踏まえつつ、次回の決定会合で十分議論して、「展望レポート」でお示しすることになる」と言及を控えた。
ただし、円安自体については、「現在の状況は円安というよりもドル高」、「今の時点で円安に回帰し過ぎて問題になるという見通しは持っていない」、「現在の為替の水準も、今年の2月頃の水準なので、別に驚くような水準とは思っていない」などと、踏み込んだ発言が目立ち、円安容認姿勢が鮮明に出ていた。
また、今回は米金利上昇によって本邦長期金利にも上昇圧力がかかる局面であったため、金利上昇を許容するか?という点にも注目が集まっていたが、「海外金利の上昇に応じてわが国の長期金利も上昇してよいとか、長期金利の操作目標を引き上げるということは全く考えていない」と一蹴。金利上昇を牽制した。
現在年80兆円増としている国債買入れの減額については、「今後どのようになっていくかということは、あくまでも適切なイールドカーブを実現することの結果として出てくるもの」、「当面、現状程度の国債購入が続いていくものと考えている」とし、年6兆円増としているETFの買入れについても、「どういった状況になればETFの買入れを減らすのかは、金融市場全体の動向や物価の動向によって、長短金利操作付き量的・質的金融緩和全体の中で考えていくことになる」、「ETFだけ取り出して、株価が上がったから止めるとか、株価が下がったら拡大するとか、そうしたことは考えていない」と、ともに目先の減額を否定した。
なお、賃上げについても、「来年の春闘に向けて色々な動きが出ているとか、賃金が上昇していく環境、基盤は十分整っている」、「期待を持って春闘の動きに注目している」と述べ、企業の賃上げを促すことを忘れなかった。
トランプ相場(円安・株高の進行)は物価上昇を目指す日銀にとって追い風となるものであり、今回の会見は余裕が感じられた。2%のハードルが極めて高いという点は従来と何ら変わらないが、追加緩和を迫られる可能性は目下低下している。日銀は長短金利操作を粘り強く続けることで実現を目指すというスタンスを前面に出し、様子見を続けるだろう。少なくとも1年程度は長短金利操作の円滑な遂行に注力し、現行政策が維持されそうだ。