ここでは、米国における再保険の消費者保護担保を巡る状況について概説する。
1|これまでの経緯
歴史的には、再保険の消費者保護担保の分野では、米国の保険監督当局は、外国の再保険会社に対して、米国の保険会社から引き受けるリスクについて、米国内で100%の担保を要求してきた。米国の消費者保護担保が必要とされるのは、再保険会社は最終的に米国の保険契約者を直接保障している他の保険会社に保険を提供しているため、保険金支払資本が、特に自然災害の場合等それが必要とされる場合に、米国会社や規制当局によって利用可能で供給可能であることを確実にすることを意図している。
しかしながら、外国の再保険会社の規制当局者や政治家は、投資機会を含む他の目的には資本を利用できないため、彼らの会社が米国に消費者保護担保を差し出さなければならないことに反対してきた。
州毎の要件の多様性の可能性を認識することにより、消費者保護担保責任の計画がより不確実で、潜在的により高価になる可能性があるため、州規制当局は、再保険者とそれを監督する規制体制の質と同等な一貫した方法で、消費者保護担保要件を削減するために、NAICを通じて協力してきた。
2011年に、NAICはNAICの再保険控除に関するモデル法(#785)と再保険控除に関するモデル規制(#786)(再保険控除モデル)の修正を行った。一旦ある州で実行されれば、修正は、再保険者が評価され、認定される場合には、米国損害賠償請求の100%を大きく下回る消費者保護担保を差し出すことを許容する。個々の再保険者は、財務力、タイムリーな請求支払履歴及び再保険者が適格管轄区域に本籍をおいて認可を受けているという要件等を含む基準に基づいて認定されている。
2|現在の状況
2013年8月、NAICは、消費者保護を軽減する目的での管轄拠点であるかどうかを判断するために再保険会社の管轄地域の監視を評価する包括的なプロセスを確立した「適格管轄区域のNAICリストを作成及び維持するためのプロセス」を採用した。2011年の再保険控除モデルの改訂では、公認再保険会社としての州による認定資格を得るためには、資格を有する管轄区域で免許を取得し、本籍地とすることを前提にした保険会社であることが要求される。 2016年1月1日現在、バミューダ、フランス、ドイツ、アイルランド、日本、スイス及び英国が、NAICの適格管轄区域リストに登録されている。
NAICはまた、外国再保険会社に米国全体にわたるパスポートの機会を提供する、州による外国再保険会社の認定に絡むピアレビューシステムを確立している。2016年1月1日現在、25以上の外国再保険会社がこのピアレビューシステムの下で認定されている。
なお、再保険の担保要件に関しては、現在は30以上の州で、一部のEUの再保険会社の担保要件を100%から10%と20%の間の水準に減らしているが、なお何らの変更も行っていない州もいくつかある。
3|EUからの要求
このように、米国は米国外の再保険会社への出再に対して、担保を要求する等の規制を課してきていたが、一部の適格国(バミューダ、フランス、ドイツ、アイルランド、日本、スイス、英国の7カ国)からの高格付けの再保険会社との取引については、担保割合を削減する等の緩和を進めている。ただし、例えばEUの全ての国が適格国に該当しているわけではなく、EUはこの点の修正を要求してきている。
5―欧米の監督当局のカバード・アグリーメントに対するスタンス