中村 亮一()
研究領域:保険
研究・専門分野
生命保険会社の責任準備金の評価において重要な意味を持つ、超長期の金利水準の設定に関連して、EUのソルベンシーIIにおいて、UFRという概念が導入されている。このUFRについて、通貨ユーロの場合には現在4.2%という水準に設定されていることから、この水準が昨今の金利水準に比較して高く、結果として、責任準備金の過小評価につながっているのではないか、との批判が起きていた。これを受けて、EIOPAにおいて、UFRの見直しに関する議論が進められ、EIOPAは4月20日に「UFRの方法論とその実施に関するコンサルテーション・ペーパー」を公表した。
これに対する意見が7月18日に締め切られたが、関係団体から「2017年からのUFR水準引き下げ」に対して、激しい反対意見が提出された。こうした関係団体の意向も踏まえて、欧州委員会もEIOPAの動きを牽制する意見を発出していた。なお、EIOPAの監督当局の間でも、ドイツとオランダの間での意見の相違も明確になっている。さらには、UFRの水準を今回見直す場合には、併せて、マッチング調整の見直しも行うべきとの意見も出されている。
3.2.11.リスクマージン、特に資本コスト率を計算する際に使用される方法及び前提条件(指令2009/138 / ECの第86条(1)(d)におけるエンパワーメントの下で)。
第77条(5)によれば、リスクマージンは、生涯にわたる保険及び再保険債務を支えるために必要なソルベンシー資本要件と同等の自己資本を提供する費用を決定することによって計算される。
EIOPAは以下のことを求められる。
・保険会社の貸借対照表におけるリスクマージンの相対的な規模に関する情報を提供する。
・変化する市場環境を考慮して、リスクマージンの計算に適用される方法及び前提が引き続き適切であるかどうかを評価する。特に、EIOPAは資本コスト率を見直すよう求められている。
ソルベンシーIIの標準式では、長寿リスクは「死亡率の20%低下」に対応するものとして評価される。これに対して、欧州の保険会社は、資本効率を高めるため、規制内容が異なり、長寿リスクに対してより緩和的な米国の(再)保険会社等へ出再したり、あるいは長寿スワップを活用して、リスクを移転する取組みを行ってきている。
昨今の低金利下で、長寿リスクをカバーする商品からのリスクマージンは大きな負担となっており、再保険取引等がこれらを削減できる有益なツールとなっている。
研究領域:保険
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