トランプ相場の賞味期限~マーケット・カルテ12月号

2016年11月21日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

月初、104円前後で推移していたドル円は、米大統領選でのトランプ氏勝利後に急激なドル高反応を示し、足元では110円台に達している。トランプ氏の掲げる大幅減税や巨額のインフラ投資等による景気回復・インフレ加速期待などから米金利が上昇しドル買いを促したほか、株高に伴うリスク選好的な円売りが活発化したためだ。12月利上げ観測もドル高に拍車をかけている。

トランプ氏勝利後のドル高には勢いがあり、当面はさらなる上昇も否定できないが、持続性は見込み難い。賞味期限は1カ月程度と見ている。現在は同氏の掲げる極端な政策のうち景気押し上げ材料に対する期待が大いに高まっているが、政策の実現性は不透明だ。いずれ限界や負の側面が見えてくることで過度の期待が剥落し、一旦揺り戻しの円高が発生すると予想している。このほか、トランプ氏によるドル高牽制の可能性もあるほか、急激なドル高が新興国や米経済自体に与える悪影響が懸念されることでリスク回避的な円高が発生するシナリオもあり得る。3ヵ月後は105円~107円程度と見ている。

ユーロも米大統領選後に対ドルで下落したが、リスク選好的な円売りが勝り、ユーロ円は足元で117円台半ばに上昇している。先行きに関しては、しばらくの後、トランプ期待剥落によってユーロも円も対ドルで買い戻されるが、揺り戻し圧力の大きい円の上昇がやや勝るだろう。3ヵ月後のユーロ円は現状比弱含みと見ている。

長期金利は、米大統領選を受けた米金利上昇の波及によってプラス化し、足元では0.0%台前半で推移している。ただし、ドル高同様、米金利上昇は長続きせず、米金利上昇が止まればプラス圏にある国債に資金が還流してくるだろう。3ヵ月後の水準は、▲0.0%台前半~0.0%付近と予想している。

(執筆時点:2016/11/21)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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