景気ウォッチャー調査(16年9月)~台風や残暑の影響が下押しも、持ち直しの基調は変わらず

2016年10月12日

(岡 圭佑)

3.景気の先行き判断DI:3ヵ月連続の改善、先行きも持ち直しが続く

先行き判断DIは48.5(前月差1.1ポイント)と前月から改善し、参考系列として公表されている季節調整値も49.6(前月差0.7ポイント)と3ヵ月連続の改善となった。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差1.2ポイント)、企業動向関連(同1.1ポイント)、雇用関連(同0.2ポイント)のいずれも前月から改善した。
計動向関連では、「秋の行楽シーズンであることや、年末にかけて年末商戦用の商材や販売量が増えてくるため、良くなる」(北関東・コンビニ)や「忘年会、クリスマスシーズンを迎え、当然ながら忙しくなる」(近畿・高級レストラン)などクリスマス商戦や年末商戦へ期待を寄せるコメントが目立った。一方、「台風で農作物が品薄となるため、価格の高騰が見込まれる。原材料コストの上昇で飲食店の経営が圧迫されるほか、家庭でも同様の動きが予想される」(近畿・一般小売店)といったように、引き続き天候不順の影響を懸念する声も寄せられた。このほか、「デフレ傾向があり一層強まっているように感じる。業界ではディスカウント店しか集客できていない」(近畿・スーパー)とのコメントのように、デフレに対する懸念は依然根強いことが窺える。

企業動向関連では、「中国経済がまだまだ悪化していくのではないかとの声があちこちから聞こえる。客からも良い情報が入ってこない」(九州・その他製造業)といったように、引き続き海外経済の動向に対する懸念がみられる一方で、「年末年始の旅行は前年と比較して予約が若干増加傾向にあるので期待が持てる」(中国・都市型ホテル)など年末年始の季節需要を指摘するコメントが散見された。このほか、「低金利で借換需要はあるが、新規の顧客はなかなか見つからない。先行き不安の状況で、不動産のような大きなものは、もう少し様子を見ようという傾向がみられる」(四国・不動産業)など住宅投資を手控える動きがみられるとのコメントが多く寄せられ、住宅市場にやや頭打ち感も見られ始めている。

雇用関連では、「求人活動が活発な警備業や人材派遣業を含むサービス業や、コンビニなど新店舗開店が相次ぐ卸売小売業などを中心として、新規求人数の増加は今しばらく続く」(中国・職業安定所)など、先行きも人手不足感の強まりが景況感を下支えする模様である。

9月調査では、台風等による天候不順の影響が下押しとなったものの、前述のとおりマインド面の下押しが和らいでいることから、景況感は緩やかな持ち直しが続いている。もっとも、年末にかけ米国の利上げや大統領選挙などを巡って金融市場が再び混乱するリスクもあり、不透明な金融市場の動向が引続き景況感の重石となろう。このため、景況感は振れを伴いながら、緩やかに持ち直すことが予想される。
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