日銀短観(9月調査)~全体的に予想の範囲内だが、景況感の先行きは弱い、設備投資計画も慎重

2016年10月03日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

(中小企業)
中小企業製造業の業況判断D.I.は▲3で前回から2ポイント改善した。業種別では全16業種中、改善が10業種と、悪化の4業種を上回った。業種別では、市況の持ち直しを受けた石油・石炭製品(11ポイント改善)、非鉄金属(6ポイント改善)などで改善が目立つ一方、生産用機械(3ポイント悪化)や繊維(同)が悪化した。

先行きについては、改善が8業種と悪化の7業種をやや上回り(横ばいが1業種)、全体では2ポイントの悪化となった。造船・重機等(13ポイント悪化)で悪化幅が大きいほか、化学(7ポイント悪化)なども大きく悪化する見込みとなっている。
 
中小企業非製造業のD.I.は1と前回比1ポイント改善した。業種別では全12業種中、悪化が6業種と改善の4業種を上回った(横ばいが2業種)。対個人サービス(6ポイント悪化)や通信(5ポイント悪化)などで悪化が目立つ一方、前回調査で大幅な悪化となった宿泊・飲食サービス(15ポイント改善)が大きく持ち直し、全体の押し上げに繋がった。

先行きも、悪化が6業種と改善の5業種を上回り、全体では3ポイントの悪化となった。大企業同様、建設(10ポイント悪化)で大幅な悪化となった他、情報サービス(6ポイント悪化)、対事業所サービス(5ポイント悪化)の悪化が目立つ。

3.需給・価格判断:内外需給は小動き、マージンはやや改善

3.需給・価格判断:内外需給は小動き、マージンはやや改善

(需給判断:内外需給は小動き)
大企業製造業の国内製商品・サービス需給判断D.I.(需要超過-供給超過)は前回比1ポイント低下、非製造業では横ばいとなった。製造業の海外需給は1ポイント上昇した。内外需給ともに大きな変化はみられない。

先行きについても、国内需給は製造業、非製造業ともに横ばい、製造業の海外需給は1ポイント低下と、それぞれ小動きとなっており、状況の大幅な変化は見込まれていない。

中小企業でも大企業同様、国内需給は製造業で前回から1ポイント低下、非製造業で横ばいとなった。製造業の海外需給も横ばい推移。先行きについても、国内・海外需給ともに小動きに留まっている(図表4)。
 
(価格判断:マージンはやや改善)
大企業製造業の販売価格判断D.I. (上昇-下落)は前回から2ポイント上昇、非製造業では1ポイント低下した。一方、仕入価格判断D.I. (上昇-下落)は製造業、非製造業ともに2ポイント低下している。販売価格は低迷しているものの、円高の影響で仕入価格が低下しているようだ。

製造業、非製造業ともに、仕入価格D.I.の低下が働き、販売価格D.I.との差し引きであるマージン(利鞘)は前回から拡大している。

販売価格判断D.I.の3ヵ月後の先行きについては、製造業では横ばい、非製造業では1ポイントの上昇が見込まれている。一方で、仕入価格判断D.I.は製造業で6ポイント上昇、非製造業でも4ポイントの上昇が見込まれているため、マージンは縮小に向かうことが想定されている(図表5)。
 
中小企業の販売価格判断D.I.は製造業、非製造業ともに前回から横ばい推移。一方で、仕入価格判断D.I.は製造業、非製造業ともに2ポイント低下したため、差し引きであるマージンは、それぞれ改善している。

先行きについては、販売価格D.I.が製造業で1ポイント低下、非製造業では1ポイント上昇と小動きが見込まれている一方で、仕入価格判断D.I.は製造業で9ポイント上昇、非製造業で6ポイント上昇と、それぞれ大きく上昇しており、大企業以上に、マージンの縮小が見込まれている。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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