【東南アジア経済】ASEANの製造業生産(8月号)~インドネシア・マレーシアは減速傾向に歯止めの動き

2016年08月12日

(斉藤 誠) アジア経済

シンガポールの16年6月の製造業生産指数は前年同月比0.3%減(前月:同0.8%増)と、旧正月の影響でマイナスとなった2月以来のマイナスを記録した。年明けから好調が続いていた主力のバイオ医療が急落したことが全体を押下げた(図表5)。

分野別に見ると、全体の約3割を占める電子製品は同19.7%増(前月:同5.3%増)と好調の半導体に加えてデータ・ストレージも増加に転じ、一段と上昇した。また精密エンジニアリングは同4.3%増(前月:同1.6%減)と半導体関連の機械・システムの輸出増加を受けて15ヵ月ぶりのプラスに転じた。一方、同じく主力のバイオ医療は同10.2%減(前月:同13.4%増)と医薬品原料の需要減を受けて低下し、6ヵ月ぶりのマイナスとなった。また化学は同5.1%減(前月:同0.8%減)と石油化学工場のメンテナンスに伴う操業停止によって低下した。輸送エンジニアリングは同17.2%減(前月:同16.9%減)と、油田開発用リグの建造の減少を受けて船舶・海運を中心に減少した。
フィリピンの16年6月の工業生産量指数は前年同月比8.5%増と、前月の同7.3%増から上昇した。選挙特需を背景とする年明けの二桁増からペースダウンしたものの、堅調な伸びが続いている(図表6)。もっとも6月はドゥテルテ大統領が環境基準を満たしていない鉱山を閉鎖する方針を示したことがベースメタルの生産を大きく押上げた可能性がある。7月には、政府が鉱山の取締りを強化し始めたことから、ベースメタルの生産は今後低下すると予想される。

業種別に見ると、全20業種中10業種が前年同月比で上昇、10業種が低下した。石油製品が31.2%増(前月:同31.4%減)、ベースメタルが同76.9%増(前月:42.6%増)、輸送用機器が同39.8%増(前月:19.7%増)と大きく上昇した。また機械・設備(同34.0%増)は高い伸びが続き、化学製品(同4.1%増)は底堅く推移した。一方、全体の約2割を占める電気機械は同3.9%減(前月:同4.1%減)と低迷したほか、食品加工は同2.0%増(前月:16.1%増)と大きく低下した。

また6月の設備稼働率は83.5%と、前月(83.4%)から概ね横ばいとなった。
ベトナムの16年6月の鉱工業生産指数は前年同月比7.4%増と、前月の同7.8%増から低下した(図表7)。依然として高水準を維持しているものの、上昇ペースは昨年7月をピークにやや鈍化している。業種別に見ると、製造業が同11.3%増、電気ガス業が同10.8%増、水供給業が同7.6%増と好調を維持しているものの、鉱業が同6.1%減と7ヵ月連続のマイナスとなって全体の重石となっている。

全体の7割を占める製造業の内訳を見ると、主力のコンピュータ・電子・光学機器(同19.6%増)をはじめ織物(同21.1%増)、アパレル(同9.5%増)、バイク(同12.9%増)など外国企業の投資が伸びている分野が堅調な伸びを続けるなか、干ばつの影響が和らいだ食品加工(同9.4%増)も平均を上回った

5月の製造業の出荷指数は同7.8%増と、これまでの二桁台の伸びに比べて鈍い動きが見られるなか、在庫指数は同9.2%増と小幅に上昇した結果、出荷・在庫バランス(出荷前年比-在庫前年比)は▲1.2%(前月:▲1.4%ポイント)ポイントと2ヵ月連続のマイナスとなった。

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠(さいとう まこと)

研究領域:経済

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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