2-6.インド
インドは15年度の実質GDP成長率が前年度比7.6%増と、14年度の同7.2%増から加速した。中国の15年の成長率(前年比6.9%)を大きく上回り、インド経済の力強さを印象付ける結果となった。
16年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比7.9%と、10-12月期の同7.2%増から大きく上昇した。投資減退と輸出不振は続いたものの、GDPの約6割を占める民間消費の好調が成長率を押し上げた。この消費拡大の背景には、14年後半から続く原油安によるインフレ率の安定と金融緩和がある。消費者物価上昇率は14年前半に8%台の高水準にあったが、14年末から現在まで概ね5%前後で推移している。また物価下落をはじめ政府による財政規律の維持や米利上げ観測の後退も追い風となり、中央銀行は15年1月から政策金利を段階的に計1.50%引き下げている。インフレ率の安定によって家計の実質所得が堅調に推移し、利下げによって耐久消費財の購入意欲が高まり、消費は景気の牽引役となっている。一方、世界経済の停滞による輸出の低迷で、製造業の設備稼働率が低迷しており、民間投資も減退している。また内需主導の景気が続き、外需の成長率への寄与度はマイナスが続いている。
先行きについても消費主導で7%台後半の高い成長が続くと予想する。まずインフレ率の安定と公務員給与の大幅引き上げによる政府支出拡大が消費を押上げるだろう。さらに今年は南西モンスーン期(6-9月)の雨量が平年並み
2に回復して3年ぶりに農業所得が改善すると見られ、年後半も消費は高い伸びを維持するだろう。一方、投資はインフラ整備の進展によって公共部門が支えとなるも、民間投資を中心に伸び悩むと見込む。これまでの金融緩和が貸出金利に浸透すれば、民間投資が回復する可能性もあるが、商業銀行は不良債権問題を抱えており貸出金利の低下には時間が掛かりそうだ。また輸出は低調な世界経済よって引き続き伸び悩むと見られ、外需の牽引力には期待できない状況が続きそうだ。
金融政策は当面据え置きとなりそうだ。モンスーン期の降雨の改善は、食品インフレを和らげるが、農村部の消費需要が増えることから時間を置いて物価上昇を引き起こす恐れもある。また足元のCPI上昇率は17年3月までに5%のインフレ目標をやや上回っていることや、今後も原油安の一巡による物価上昇圧力は続くこと、そして米国の追加利上げを踏まえると、中央銀行は金融緩和に慎重にならざるを得ないだろう。
2017年度は海外経済の緩やかな回復によって輸出が拡大するなか、今年5月に成立した「破産法」は銀行の不良債権処理の後押しとなって投資は停滞局面から抜け出すだろう。しかし、農業所得の向上と公務員給与の引き上げといった消費の押上げ要因が一巡することから、景気はやや鈍化すると見込む。
結果、成長率は16年度が前年度比7.6%増、17年は同7.4%増と予想する(図表10)。
2 6月2日、IMD(インド気象局)は2016年の南西モンスーン期の全国の雨量は長期平均の106%程度になるとの見通しを公表した。