5|Zurich
(1)地域別の業績-2015年の結果-
Zurichも、AXA同様に幅広く海外展開を進めている。
欧州では、自国のスイス以外に、ドイツや英国から高い営業利益を上げている他、スペイン、イタリア、アイルランド等からの営業利益も有意なものとなっている。ただし、こうした欧州からの構成比は全体の7割弱であり、残りの3割は米国
10、中南米、アジア・太平洋等が占めている。
特に、他社との比較では、アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ等の中南米の位置付けが高いのが特徴的である。Banco Santanderとの提携によるZurich Santanderにおける販売が貢献している。
(2)地域別の業績-2014年との比較-
Zurichの決算数値は米ドル建で報告されているため、2014年との比較を見る上では、2015年に米ドルが主要通貨に対して強い状況で推移していたことを考慮しておく必要がある。
報告数値だけをみれば、全体的に多くの項目でマイナス進展となっており、特に中南米とアジア・太平洋でのマイナスが大きくなっている。ただし、これらは、基本的には米ドル高によるものであり、現地通貨ベース
11で見れば、順調に進展している、としている。
具体的には、Zurichの説明資料によれば、現地通貨ベースで見た場合、保険料に手数料や預託金や含めた金額はイタリアやスペインでの貯蓄性商品や南米での保障性商品が好調だったことから、6%増加している。さらに、営業利益の進展率については、全体 16%(米ドルベースで2%、以下同様)、欧州・中東・アフリカ 10%(▲3%)、中南米 13%(▲12%)、となっている。会社全体の新契約価値も、現地通貨ベースでは7%(▲5%)増加している、としている。
(3)投資関係損益を巡る状況
2015年の投資マージン(現地通貨ベースで一時的要因除き)は、前年に比べて、欧州・中東・アフリカにおいて、若干低下した。イタリアやスペインが成長したが、ドイツやスイスの低金利の影響を相殺できなかった。米国やアジア・太平洋においても金利低下の影響を受けて低下した。ただし、中南米において高い投資マージンが確保されたため、グループ全体では若干(6%)増加した。
投資マージンの水準自体は、中南米やアジア・太平洋が高い水準を維持している。
なお、Zurichの投資利回り(ネット)は、3.43%(2013年)、3.38%(2014年)、3.09%(2015年)と低下してきている。
Zurichも、資産の負債のデュレーション・ギャップに関する数値は公表していない。
(4)年金事業リスクの移転
Zurichは2005年に新たな年金契約を積極的に獲得することを止めて、2007年にはその年金契約の一部をWindsor Lifeに移転する等してきたが、2015年には英国の年金事業をRothesay Lifeに売却することとし、結果的にその殆どの年金契約を再保険に出すか、売却することで、年金事業のリスクを軽減してきた。現在進行中の年金事業の移転により、毎年の営業利益が約3%改善するとしている。
10 Zurichの米国子会社グループは、他の米国事業を有する4社の米国子会社グループの規模とは異なり、2014年末の認容資産ベースで、生命保険・健康保険グループで第68位である。
11 為替レートが変化しなかったとした場合の合計数値でみた場合