円高圧力が再び上昇、追加緩和が焦点に~マーケット・カルテ5月号

基礎研REPORT(冊子版) 2016年5月号

2016年04月18日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

円高圧力が再燃している。4月15日のG20において、米国が日本の為替介入を認めない姿勢を示唆し、介入警戒感が後退したうえ、17日の主要産油国会合にて増産凍結協議が決裂したことで、リスク回避的な円買い圧力が強まっているためだ。足元のドル円は108円付近に下落し、年初来高値(107.63円)の突破も視野に入った。

ドル円は、しばらく円の上昇余地を試す展開が続きそうだが、そうした中で日銀の4月追加緩和が注目される。従来、追加緩和は7月と予想していたが、原油安・円高の進行、震災の発生に伴い、前倒しされる可能性が高まったと判断、緩和時期の予想を4月に変更する。緩和手法としては、副作用への懸念が強いマイナス金利の拡大は避け、ETFの買入れ増額や(貸出を伸ばした銀行に対する)マイナス金利での資金供給等が採用されると予想。追加緩和の実施でドル円は一旦やや円安に振れるだろう。そして、6月が近づくにつれて米利上げ観測からドルの買い戻しが入ることもドル高圧力になるが、利上げが原油安や人民元安を誘発し、リスク回避の円買いをもたらす可能性も意識されることから、ドル円の上値は抑制されそうだ。

ユーロ円でも足元はリスク回避の円買いが発生、121円台まで円高が進んでいる。今後はドル円同様、しばらく円高余地を試す展開が続いた後、日銀の追加緩和で円安方向に戻すと見るが、ユーロを積極的に買う材料も見当たらず、3ヵ月後もユーロの上値は重いままだろう。

長期金利は、需給逼迫感とリスク回避の債券選好により、-0.1%をやや下回る水準に低下している。今後も特段の金利上昇要因は見当たらないが、高値警戒感から金利低下余地も限定的とみられ、-0.1%程度での推移を予想している。
(執筆時点:2016/4/18)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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