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不動産市場・不動産市況
景況見通しが一変、悲観が楽観を上回る-不動産価格のピークは15~18年と見方分かれる-第12回不動産市況アンケート結果
基礎研REPORT(冊子版) 2016年4月号
2016年04月07日
(増宮 守)
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ニッセイ基礎研究所では、第12回不動産市況アンケートとして、不動産分野の実務家・専門家 を対象に、2016年1月7日から15日にかけて例年のアンケート調査を実施した。今回、202名を対象に電子メールで実施し、111名から回答を得た(回収率55%)。
1――不動産投資市場の景況感
「不動産投資市場全体(物件売買、新規開発、ファンド組成)の現在の景況感」について聞いたところ、「良い」が48.6%、「やや良い」が39.6%、「平常・普通」が9.0%、「やや悪い」が2.7%、「悪い」が0%となった。2013年度以降、3年連続で「良い」または「やや良い」が約9割を占めた[図表1]。
次に、「不動産投資市場全体の6ヵ月後の景況見通し」について聞いたところ、「良くなる」が5.4%、「やや良くなる」が16.1%、「変わらない」が54.5%、「やや悪くなる」が21.4%、「悪くなる」が2.7%となった。「良くなる」または「やや良くなる」が過半数を占めていた昨年までに対し、今回、「変わらない」が過半数を占めた[図表2]。さらに、「やや悪くなる」と「悪くなる」の合計が、「良くなる」と「やや良くなる」の合計を上回り、2008年度以来初めて悲観が楽観を上回った[図表3]。
極めて良好な現在の景況感に変化が表れなかった一方、6ヶ月後の景況見通しは、楽観優位から楽観と悲観が交錯するものに一変したといえる。
2――投資セクター選好
「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資セクター(証券化商品含む)(3つまで選択)」について聞いたところ、昨年度に続き「ホテル」とした回答が最多の82.9%となり、「物流施設」が43.2%、「ヘルスケア不動産(高齢者向け住宅、健康医療関連施設)」が40.5%などとなった[図表4]。
期待を上回るペースの訪日来客数の増加に伴い、ホテル客室稼働率が過去最高水準で推移している。これまで、「ホテル」は一部の専門プレーヤーが扱うセクターであったが、最近では、多くの企業でホテル投資担当部署の設置、強化が進んでいる。また、「ホテル」に加え、昨年度大きく増加した「リゾート施設」(13.5%)も、さらに2倍近くに増加した。
その他、昨年度やや関心が薄れていた「物流施設」が、再び大幅に増加した。2015年末から再び大量供給局面を迎えており、当面の需給懸念はあるものの、ストック拡大により流動性が向上し、投資対象として魅力を増す可能性がある。
一方、これまで主な投資対象セクターとして常に上位を占めてきた「オフィスビル」(26.3%)が、大幅に回答数を減らした。空室率低下と賃料上昇が続いているにもかかわらず、力強いオフィス需要の拡大がみられていない。また、不動産価格サイクルが最も表れ易いセクターであるため、サイクルのピークアウトを視野に、より成長性の見込める他のセクターに見劣りしたとも考えられる。
その他、「分譲マンション」(3.6%)の減少も目立ったが、人口動態や空き家の増加などに加え、最近の価格高騰や杭打ちデータ偽装などによるマンション販売の伸び悩みも影響したとみられる。
3――不動産投資市場のリスク
「不動産投資市場への影響が懸念されるリスク(3つまで選択)」について聞いたところ、「世界経済」が28.1%、「国内景気」が17.9%、「金利」が12.8%、「地政学リスク」が12.5%などとなった[図表6]。
元来、海外要因の国内不動産投資市場への影響は間接的であるが、今回、「世界経済」が「国内景気」を大きく上回り、また、「地政学リスク」も大幅に増加した。
世界経済については、中国経済の失速懸念に伴い、広く新興国経済の高成長が減速しつつある。世界的にリスク意識が高まる中、グローバル企業のオフィス需要の他、インバウンド顧客への影響も懸念される。また、2014年に大幅拡大した海外資金による国内不動産の取得が再び縮小する可能性もある。
加えて、テロ事件が中東諸国に止まらず、先進国のパリ、あるいはアジアのバンコク、ジャカルタなどでも発生し、日本の不動産市場が影響を受ける可能性も否定できなくなってきた。
一方、国内の不動産投資市場に最も大きく影響するはずの「国内景気」は、当面の悪化懸念が大きくないとして、今回、回答者の2割未満にしか選択されなかった。同様に、金融緩和政策の継続を見据え、「金利」を選んだ回答も限定的であった。また、2015年初まで高騰が続いた「建築コスト」(5.1%)についても、最近の動きが落ち着いていることから、懸念する見方は少なかった。
4――J-REIT市場の見通し
J-REIT市場の見通しとして、「2016年の東証RETI指数の年間騰落率の予想」を聞いたところ、「0~ +15%」が67.6%、「-15~0%」が24.3%などとなった[図表7]。
2016年初から株価が大きく下落しているものの、J-REIT価格の年間騰落率はプラスになるとの見方が多く、また、上下15%以内の価格変動に収まるとする回答が9割以上であった。
J-REIT価格は、2015年に伸び悩み、株式市場をアンダーパフォームしたことから、比較的売られにくい状況となっている。また、J-REITの分配金の安定性と現在の利回り水準に魅力を感じる投資家は多く、下値余地は限定的との見方もある。一方、2015年初にみられたように、価格上昇により一定の分配金利回りの確保が難しくなる際には、J-REIT価格の上値は重くなると考えられる。
5――不動産価格のピーク
「東京の不動産価格のピークはいつごろと考えるか」を聞いたところ、「2015年あるいは現在」が27.9%、「2017年下期~2018年」が27.9%、「2016年~2017年上期」が27.0%などと見方が分かれた[図表8]。
国内で高額の不動産取引が続いた一方、金融市場で世界的にリスク意識が高まるなか、既にピークとする回答が3割近くに達した。
一方、依然として買い手の取得意欲は強いとして、当面は不動産価格の上昇が続くとする回答が合わせて過半数を占めた。その中でも、米国金利の引き上げの影響や来年の消費税率の引き上げを視野に「2016年~2017年上期」を予想する回答と、国内の低金利は当面継続するとして「2017年下期~2018年」を予想する回答の2つに分かれた。
他方、不動産価格にとってプラス要因といえる東京オリンピックについて、実際の開催時期まで不動産価格の上昇が続くとの見方は少なかった。
また、「2021年以降」(3.6%)との回答も少なく、オリンピックを経て東京の国際競争力が向上するという見方や、インフレ対応資産として長期的な不動産価格の上昇を期待する見方は限定的といえる。
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