経済研究部 准主任研究員
斉藤 誠(さいとう まこと)
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
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(1)マレーシア、タイ、インドネシア、インド:10-12月期GDPを公表
2月は、マレーシア(18日)とタイ(16日)、インドネシア(5日)、インド(9日)で2015年10-12月期のGDP統計が公表された。
このうち実質GDP成長率(前年同月比)は、インドネシアが同5.0%増(前期:同4.7%増)と上昇した。インドネシアは年前半に遅れていた政府の予算執行が加速し、政府支出の拡大が景気を押上げた。成長率は4期ぶりの5%台まで回復した。
一方、マレーシアは前年同期比4.5%増(前期:同4.7%増)、タイは同2.8%増(前期:同2.9%増)、インドは同7.3%増(前期:同7.7%増)とそれぞれ成長率が低下した。まずマレーシアは、原油価格下落を背景とする鉱業の資本支出の減少を受けた投資の鈍化が景気減速に繋がった。またタイは、景気刺激策の影響で内需が堅調だったものの、海外経済の減速を受けて農林水産品や工業製品の輸出の減少が影響した。このほか、インドは民間投資の鈍化によって成長率が前期から低下したが、インフレ率の低下と昨年計1.25%の利下げを追い風に個人消費が上昇し、依然として力強い成長が続いていることが明らかとなった。
(2)韓国:追加の景気刺激策を発表(3日)
韓国では、3日に政府が景気刺激策を発表した。輸出をはじめとする主要経済指標が1月に悪化し、これまで昨年の景気刺激策の効果で底堅く推移してきた内需まで揺らぐ恐れが高まったため、政府は年明け早々の景気対策に踏み切った。
今回の景気対策は、1-3月期の財政と政策金融の支出規模を前倒しによって21兆ウォン以上増やし、昨年末に終了した乗用車に対する個別消費税の引下げ措置を6月まで延長、また2月に大規模なショッピング・観光イベントを開催する内容となっている。公共セクターの支出規模は、財政面では当初計画から6兆ウォン(中央と地方、地方教育の支出をそれぞれ2兆ウォン)拡大し、輸出入銀行や中小企業銀行など政策金融を当初計画から15.5兆ウォン拡大するとした。
(3)インド:2016-17年度政府予算案公表(29日)
インドでは、29日に政府が2016-17年度予算案を公表した。インフラ整備や農業支援など景気に配慮しつつも財政健全化を進める内容となった。
歳出総額は前年度比10.8%増の19兆7,806億ルピーとし、インフラ予算を同22%増、農業関連予算を同84%増とした。歳出を拡大させる一方、歳入面では税収を同11.2%増の10兆5,410億ルピーと拡大させた結果、財政収支(対GDP比)は今年度の▲3.9%から▲3.5%へと赤字が縮小し、財政健全化を進展させる内容となった。従って、経常赤字を抑制する内容との評価から、先行きインド準備銀行が利下げに踏み切る可能性が高まったと言える。
また税制改革では、GST法案成立の期限を定めなかったものの、法人税減税では新会社に限り税率を30%から25%に引き下げるとし、既存の法人は対象外となった。また渋滞や大気汚染の緩和に向け、自動車販売には排気量に応じたインフラ税を掛けるとした。
3月は韓国(10日)、台湾(下旬)、マレーシア(31日)、タイ(23日)、インドネシア(17日)、フィリピン(23日)の中央銀行で金融政策会合が開かれる。
資源価格の低迷と国内経済の鈍さを背景に、各国・地域のインフレ率は低く、また3月に開かれる米FOMC(連邦公開市場委員会)では利上げ先送り観測が高まっており、利下げ余地を残している国・地域は多いと言える。特にインフレ率の低下が顕著なインドネシアと景気低迷の長期化が懸念される台湾では、それぞれ追加利下げに踏み切る可能性はあるだろう。しかし、その他の国は景気刺激策などによって一定程度景気減速を抑制できており、政策余地を残すためにも金融政策を現行の緩和的水準で据え置くことになりそうだ。
経済研究部 准主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職