消費者物価(全国16年1月)~コアCPI上昇率は15年度末にかけてマイナスへ

2016年02月26日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.コアCPI上昇率はゼロ%

総務省が2月26日に公表した消費者物価指数によると、16年1月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.0%(12月:同0.1%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.0%、当社予想は▲0.1%)通りの結果であった。
食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は前年比0.7%(12月:同0.8%)と上昇率が前月から0.1ポイント縮小、総合は前年比0.0%(12月:同0.2%)となった。
コアCPIの内訳をみると、電気代(12月:前年比▲5.7%→1月:同▲6.4%)は下落幅が拡大したが、ガス代(12月:前年比▲7.8%→1月:同▲7.6%)、ガソリン(12月:前年比▲17.8%→1月:同▲16.7%)、灯油(12月:前年比▲27.0%→1月:同▲26.3%)の下落幅が縮小したため、エネルギー価格は前年比▲10.7%(12月:同▲11.0%)となり、下落率が前月から若干縮小した。
一方、値上げが続いていた食料(生鮮食品を除く)が前年比2.1%と12月の前年比2.3%から伸びが鈍化したこと、冷暖房器具、ルームエアコンなどの家庭用耐久財(12月:前年比4.7%→1月:同1.0%)、テレビ、カメラなどの教養娯楽用耐久財(12月:前年比14.7%→1月:同11.7%)の伸びが鈍化したことがコアCPIを押し下げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.99%(12月:▲1.05%)、食料(生鮮食品を除く)が0.48%(12月:0.52%)、その他が0.51%(12月:0.63%)であった。
 

2.物価上昇品目数の割合は引き続き6割を上回る

消費者物価指数の調査対象524品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、1月の上昇品目数は338品目(12月は347品目)、下落品目数は131品目(12月は125品目)となった。
上昇品目数の割合は64.5%(12月は66.2%)、下落品目数の割合は25.0%(12月は23.9%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は39.5%(12月は42.4%)であった。
コアCPI上昇率はゼロ近傍の推移が続いているが、品目数でみれば引き続き6割以上の品目が値上がりしており、物価上昇の裾野は広がりをみせている。

3.コアCPIは再びマイナスへ

16年2月の東京都区部のコアCPIは前年比▲0.1%(1月:前年比▲0.1%)と2ヵ月連続の下落となり、下落率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.2%、当社予想も▲0.2%)を上回る結果であった。
ガソリン(1月:前年比▲16.7%→2月:同▲16.0%)、灯油(1月:前年比▲19.9%→2月:同▲17.0%)の下落幅は縮小したが、電気代(1月:前年比▲10.4%→2月:同▲11.8%)、ガス代(1月:前年比▲13.7%→2月:同▲15.3%)の下落幅が拡大したことから、エネルギー価格の下落率は1月の前年比▲12.3%から同▲13.5%へと拡大した。
一方、1月に5ヵ月ぶりの下落となった被服及び履物が再び上昇に転じたこと(1月:前年比▲0.6%→2月:同1.0%)、宿泊料(1月:前年比1.8%→2月:同2.9%)、外国パック旅行(1月:前年比3.2%→2月:同9.5%)などの教養娯楽サービスの上昇率が高まったこと(1月:前年比1.2%→2月:同2.2%)がコアCPIを押し上げた。
東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲0.90%(1月:▲0.82%)、食料(生鮮食品を除く)が0.43%(1月:0.39%)、その他が0.37%(1月:0.33%)であった。

 
エネルギー価格の前年比下落率は15年9月をピークに縮小傾向となっていたが、東京都区部では1月、2月と下落率が拡大しており、全国でも先行きは下落率が拡大に向かう公算が大きい。電気代、ガス代は原油価格下落の影響が遅れて反映されるため、エネルギー価格の下落ペースは16年夏場にかけてさらに拡大し、下落率は15年夏頃を明確に上回るだろう。全国のコアCPI上昇率は15年度末までにマイナスに転じた後、16年度入り後はマイナス幅が拡大することが予想される。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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