円安シナリオは崩壊したのか?~マーケット・カルテ3月号

2016年02月22日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

先月末の日銀によるマイナス金利導入で一旦121円台に押し上げられたドル円だが、その後は急激に円高が進み、足元も112円台にある。中国不安や原油安などのリスクへの警戒が根強く、リスク回避の円買いが旺盛なうえ、米景気の減速懸念から利上げ期待が大きく後退し、ドル安圧力が強まった。

市場の円安期待は大きく後退しているが、果たして円安シナリオは崩壊したのだろうか?筆者はそうは思わない。世界的な危機に陥らない限り、リスク回避はいずれ一服する。また、米経済に対する市場の悲観には行きすぎの感がある。米国の消費や物価指標には強いものも見られる。市場が織り込む今年の利上げ回数は1回未満だが、2回は可能だろう。従って、今後3ヵ月というタームでは、政策対応などからリスク回避が後退し、再び米追加利上げ観測が高まるにつれ、円安ドル高方向に進むと見ている。ただしリスク要因は数多く、しばらくはリスク回避地合いが続きそうだ。さらに、米国の3月利上げの可能性は低いため、春までは一段と円高が進む可能性も排除できない。

ユーロ円でも、今月に入り円高が進んでいる。リスク回避の円買いが対ユーロでも進んだうえ、ECBの3月追加緩和が意識されているためだ。ドル円同様、今後もしばらく円高に警戒が必要な情勢だが、ECBの追加緩和は既に相当織り込まれている。また、今後3ヵ月で考えれば、市場のリスク回避後退に伴う円安ユーロ高が期待される。

長期金利は、マイナス金利導入を受けて急低下し、近頃は0%付近で方向感を欠く展開となっている。今後もしばらく適正水準を模索する動きが続くが、基本的にゼロ%付近での推移を予想している。金利上昇余地は乏しいものの、高値警戒感も出るため、マイナス幅をどんどん拡大していく展開にはなりにくい。
(執筆時点:2016/2/22)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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