各社の内部モデルの使用が認められるためには、監督当局の承認が必要になる。昨年の4月以降に各社の申請が行われていたが、つい最近まで中々承認の声が聞かれなかった。さすがに、2016年1月を迎えるまでの 1か月前後になって、11月から12月にかけて、各国の監督当局から各社に対して、承認の通知が与えられ、各社から承認が得られた旨のプレス・リリースが行われている。
この章では、主要各国におけるそうした状況を報告する。なお、各社毎の状況のうち、Prudential、Allianz、AXA等の大手欧州保険グループの詳しい状況については、次回のレター「EUソルベンシーIIの動向-各社のSCR算出のための内部モデルの適用申請等はどのような結果になったのか(2)-」で述べることとする。今回のレターでは、その他の会社で内部モデルの承認等を公表している会社の中から、比較的詳しい情報を公開している会社のケース等を紹介しておく。
なお、今回の各社のプレス・リリースにおいては、内部モデル使用の承認を得たと公表している一方で、ソルベンシーIIに基づくSCR比率の数値については、引き続き、EUの同等性評価の問題が決着していないことや税の取扱等に関する規制の解釈の問題があることから、不確実性を有している、とコメントしている。
1|英国における状況
(1)全体の状況
英国では、2015年12月5日
4に監督当局であるPRA(健全性規制機構:Prudential Regulation Authority)が、以下の19の生命保険会社に対して、内部モデル(部分内部モデルを含む)の使用を承認したと発表している。
Amlin, Aspen Insurance UK, Aviva, British Gas Insurance, Just Retirement, Legal & General, Markel, MBIA UK, NFU Mutual, Pacific Life Re, Pension Insurance Corporation, Phoenix Group, Prudential, QBE European Operations, RSA Insurance, Scottish Widows Group, Lloyd's, Standard Life,Unum European Holdings Company Ltd.
これらの会社のモデルが、全てのリスクをカバーする「完全内部モデル」なのか、選択されたリスクや事業単位の選択のみをカバーする「部分内部モデル」なのかどうかは、この段階では明らかにされていない。これについては、今後の各社のプレス・リリース等を待つことになる。
なお、PRAは併せて、マッチング調整(MA)、ボラティリティ調整(VA)及び技術的準備金の経過措置に関する申請に対する承認も与えている。これらについては、プレス・リリースではなく、Financial Services Registerの中で明らかにされているが、いずれの措置についても、上記の内部モデル使用の承認を受けた会社を含めて、多くの会社の適用が承認されている。
(2)BUPA-USP(会社固有のパラメータ)を使用-
保険リスクを調整することを望む会社のための別のオプションとして、USPを使用することが挙げられる。健康保険会社のBUPA
5は、Bupa GroupとBupa Insurance Limitedに対して、標準的な保険料リスクパラメータをUSPに置き換えて使用する承認を得たと公表している。
USPは、保険会社が、標準的方式のパラメータを企業の経験を反映したパラメータに代替させることを意味するが、これは、(部分)内部モデルを開発することに比べて、コストがかからない簡単な代替手法と考えられている。
4 以下、特に断りが無い限り、日付は2015年である。
5 2014年度の収入保険料7,091百万ポンド、2014年度末の総資産11,746百万ポンド