低空飛行が続く日本経済~浮上する「賃上げ停滞」のリスク

2016年01月15日

(斎藤 太郎) 日本経済

  1. 2015年10、11月の経済指標は低調なものが多く、2015年10-12月期が再びマイナス成長に陥る可能性が出てきた。日本経済は消費税率引き上げの影響が一巡した2015年度入り後も低空飛行が続いている。
     
  2. 個人消費は安倍政権発足時からほとんど伸びておらず、実質GDP低迷の主因となっている。個人消費回復のためには賃上げを通じて企業に滞留する余剰資金を家計に還流させることが不可欠である。
     
  3. 企業収益の好調、労働需給の逼迫など、賃上げを継続するための経済の好環境は継続しているが、2016年春闘に向けた連合や各労働組合の賃金要求水準は昨年よりもやや後退している。
     
  4. 安倍政権発足時から消費者物価は約4%上昇したが、この間に名目賃金はほとんど伸びておらず、実質賃金は大幅に低下した。足もとの消費者物価上昇率はほぼゼロ%だが、原油価格下落の影響が一巡すれば1%程度まで上昇し、ようやく上昇に転じた実質賃金が再び低下する恐れがある。
     
  5. 日本銀行が2%の物価目標を掲げる中で目指すべき賃上げ率はベースアップで最低2%と考えられるが、2015年のベースアップは1%にも届いてない。国内最大のリスクは2014年に始まった賃上げが停滞することで個人消費の回復がさらに遅れることである。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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