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日本企業はESGをどう認識しているか?-海外事業展開を背景に、ESGの促進要因を探る
2015年12月29日
(川村 雅彦)
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〔海外事業展開が進むと、また外国人株主が増えると、ESG認識は高まる〕
そこで、企業の海外事業展開に着目した仮想的な「海外売上比率」と、今後上昇が予想される「外国人持株比率」に対する「ESG重要度」との関係をみてみた。具体的にはアンケートデータを基に独自のウエイト付けにより、それぞれを数値化
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してプロットしたものである(図表10)。
「海外売上比率」が高いほど、「ESG重要度」も高まる傾向は明らかである
(直線近似)。特に、海外売上比率の高い加工型製造業の一般・精密機械、電気機械、輸送用機械では、ESG重要度も高い水準にある。このグループに準ずるのが素材型製造業の鉱業・石油、化学、非鉄金属である。非製造業では全体に海外売上比率は低いが、ESG重要度には業種によるバラツキがあり、通信や電気・ガスではESG重要度が高い。なお、今後、海外売上高が増えれば、顧客のESG監査も増えよう。
他方、
「外国人持株比率」と「ESG重要度」についても因果関係が認められる
(対数近似)。加工型製造業や素材型製造業ではいずれも両変数は高い水準にはあるものの、海外売上比率とESG重要度の関係ほどの業種的偏りはない。なお、今後、外国人株主が増えれば、ESGの照会も増えてこよう。
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「海外売上比率(%)」=海外売上比率の回答の比率刻みの中央値に回答%を乗じた数値の総和
「外国人持株比率(%)」=外国人持株比率の回答の比率刻みの中央値に回答%を乗じた数値の総和
おわりに
前述した分析から、
日本企業のESGの重要性認識を促進する要因は、『海外事業展開の進展』と『外国人株主の増加』の二つに集約できる
と考えられる。それゆえ、現時点では4割を占める「ESGの重要性の判断に迷う企業」も、経営課題としてのESGについて、時代の流れの中で徐々に自ら判断するようになるだろう。
今後、日本企業はグローバル化の進展とともに、日本社会とは異なる多様な価値観(社会的課題を含む)と遭遇し、マネジメント(あるいはガバナンス)としてESGを中心とする非財務要素への配慮が企業価値の創造に強く寄与することが納得できるようになろう。
また、日本版スチュワードシップ・コードの発行に加え、GPIFのUNPRIへの署名により、機関投資家とりわけ外国の長期投資家の増加が予想され、日本においても企業に対するエンゲージメントやESG投資が促進されることが予想される。これら二つの要因が相まって、日本企業のESGに対する重要性認識がさらに高まることに期待したい。
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川村 雅彦
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