日銀短観(12月調査)予測~大企業製造業の業況判断D.I.は3ポイント低下の9を予想

2015年12月08日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. 12月調査短観では、注目度の高い大企業製造業で2四半期連続となる景況感悪化が示されると予想する。大企業非製造業も5四半期ぶりに景況感が悪化すると予想。前回以降、景気が大きく悪化しているわけではないものの、長引く景気の足踏み感は企業マインドにマイナスに働くはず。大企業製造業では、生産こそ回復基調にあるものの需要に力強さはみられず、特にこれまでの収益源であった新興国経済の減速が響き、景況感が下振れると見ている。非製造業では、旺盛な訪日外国人の消費が下支えになるものの、国内消費の伸び悩みの影響が勝り、景況感が小幅に悪化する。建設業での杭打ち不正問題等の影響も景況感の下押し圧力になりそうだ。中小企業も、大企業同様、景況感の悪化が示されると予想。

  2. 先行きの景況感についても、改善は見られないだろう。米利上げ、中国経済減速などから、海外経済の先行き不透明感は強い。また、非製造業を支えるインバウンドも、国際的に相次ぐテロの影響や中国経済の減速によって、今後勢いが削がれるリスクが意識されそうだ。

  3. 15年度設備投資計画(全規模全産業)は、前回からほぼ横ばいに留まると予想。例年、12月調査では中小企業で上方修正される傾向が極めて強いが、大企業の下方修正がその効果をほぼ相殺する。大企業では前回まで非常に強気の計画であったが、冴えない内外経済情勢を受けて、製造業を中心に一部計画の先送りや棚上げの動きが出ると予想している。

  4. 今回の最大の注目ポイントは15年度の設備投資計画だ。最近の設備投資は方向感が掴みにくくなっている。過去最高圏にある利益を背景に、強気の計画が維持されるのか?それとも、冴えない内外情勢や先行きの不透明感を受けて、企業が慎重姿勢に転じるのか?今後の日本経済の反発力を占ううえで重要なファクターになるだけに、大いに注目される。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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