経済研究部 主任研究員
窪谷 浩(くぼたに ひろし)
研究領域:経済
研究・専門分野
米国経済
関連カテゴリ
【要旨】
1.結果の概要:雇用増加数は市場予想を大幅に上回り、年初来最高の水準
11月6日、米国労働省(BLS)は10月の雇用統計を公表した。10月の非農業部門雇用者数は前月対比で+27.1万人の増加1(前月改定値:+13.7万人)となり、市場予想の+18.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回ったほか、増加幅は年初来最高となった(後掲図表2参照)。
失業率は5.0%(前月:5.1%、市場予想:5.0%)と、こちらは前月から小幅低下し、市場予想には一致した。一方、労働参加率2は62.4%(前月:62.4%)と、77年9月以来の水準となった前月から変化は無かった(詳細はPDFを参照)。
2.結果の評価:労働市場の順調な改善を確認、12月利上げを後押しする内容
10月の雇用増加ペースが大幅に再加速したことで、年初からの月間平均増加数は再び20万人を上回る水準となった。この結果、8月の雇用統計以降懸念されていた、労働市場の回復ペースが大幅に鈍化したのではとの見方は否定された。米国では依然として順調な雇用増加が持続しているとみられる。
また、失業率は前月から小幅低下し、FRBが目標とする4.9%の水準にさらに近づくなど、こちらも改善基調が持続している。もっとも、労働参加率には明確な改善がみられておらず、失業率が示すほど労働市場がタイト化していない状況が持続していることは割り引いて評価する必要がある。
一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は前月比で+0.4%(前月:横這い)、前年同月比でも+2.5%(前月:+2.3%)と前月から加速し、市場予想の+0.2%、+2.3%も上回った。賃金も労働市場の改善が続いていることを示す内容となった。
このようにみてくると、9月の雇用統計とは対照的に、10月は労働市場が順調に改善していることを確認する非常に良好な内容であったと言える。10月のFOMC会合では12月の次回会合で政策金利引上げの可否を判断するとの表現が盛り込まれ、FRBの年内利上げに対する意欲が示された。海外経済に対する懸念は残るものの、米資本市場が足元で安定化していることを考慮すると、10月の良好な雇用統計を受けて12月利上げの可能性が高まったと判断できる。
経済研究部 主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
米国経済
【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員