家計調査15年8月~実質消費支出は市場予想を上回る高い伸び

2015年10月02日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・実質消費支出は市場予想を上回る高い伸び
・実質所得の改善が個人消費を下支え

■要旨

総務省が10月2日に公表した家計調査によると、15年8月の実質消費支出は前年比2.9%(7月:同▲0.2%)と2ヵ月ぶりの増加となり、事前の市場予想(QUICK集計:前年比0.2%、当社予想は同0.8%)を大きく上回る結果となった。前月比では2.5%(7月:同0.6%)と2ヵ月連続の増加となった。月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比1.9%(7月:同1.1%)、前月比1.5%(7月:同1.1%)といずれも2ヵ月連続の増加となった。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比2.9%と3ヵ月ぶりに上昇し、7、8月の指数平均は4-6月期よりも1.1%高くなった。実質消費水準指数は4-6月期には前期比▲1.0%と落ち込んだが、7-9月期は2四半期ぶりの上昇となる可能性が高い。

個人消費は15年度に入ってから低調な動きが続いていたが、8月の消費関連指標は家計調査を中心に強めのものが多かった。ただし、家計調査は月々の振れが大きい統計であるため、今月の結果だけで消費が回復軌道に戻ったと判断するのは早計だ。実際、消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は15年3月に前月比3.3%の高い伸びとなったが、4月に同▲3.7%と急速に落ち込んだ後、7月まで底這い圏の動きが続いた。消費の基調を判断するには9月以降の結果を見る必要がある。
現時点では15年4-6月期に前期比▲0.7%と4四半期ぶりの減少となったGDP統計の民間消費は7-9月期には増加に転じると予想している。ただし、所得の伸び悩みが続いていることから持ち直しのペースは緩やかにとどまり、4-6月期の落ち込みを取り戻すまでには至らないだろう。
先行きの個人消費は緩やかな持ち直しが続くことが予想される。毎月勤労統計の特別給与が6、7月の合計で前年比▲3.5%の減少となるなど、名目賃金は伸び悩んでいるが、15年8月の消費者物価(生鮮食品を除く)が前年比▲0.1%と2年4ヵ月ぶりにマイナス(ただし、総合は前年比0.2%)となるなど、物価高による実質所得の押し下げ圧力は緩和されている。株価下落などが消費者心理の悪化につながるリスクはあるものの、当面は物価下落に伴う実質所得の改善が個人消費を下支えすることが見込まれる。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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