川村 雅彦()
研究領域:
研究・専門分野
■要旨
日本版スチュワードシップ・コードの狙い
昨年2月、金融庁は機関投資家向けの行動原則である『日本版スチュワードシップ・コード』を公表し、機関投資家197機関が「受け入れ」を表明した。
このコードは、機関投資家が株式の保有者・運用者として投資先企業に対し、その企業価値の向上や持続的成長につながるよう、「実力」をつけて「対話」により積極的に働きかけることを責務として求める。
国連の責任投資原則の狙い
このコードが「責任ある投資」について、他者から求められる行動規範的な性格をもつのに対して、2006年に公表された国連の『責任投資原則』(略称PRI)は機関投資家が自らの意思として行動原則をつくり賛同者を募るものである。
PRIは"資産運用においても、環境・社会・ガバナンス(ESG)問題に配慮することにより、社会的責任を果たすこと"を基本精神とする。現在の署名機関は世界で1,378となったが、本邦機関は33と決して多くはない。
持続可能なビジネスとは
コードとPRIに共通するのは、長期的視点にたった『責任ある投資』である。しかし、責任遂行における力点は異なる。前者が"手段"と"実力"、後者が"ESG問題"にも視野を広げていることである。
近年の世界的な財務・非財務情報を融合する統合報告の模索を考えると、グローバル・ローカルの中長期的な事業環境変化を軽視した経営戦略は画餅に帰すリスクもある。やはり、『持続可能なビジネスは持続可能な環境・社会にしか宿らない』ことを銘記すべきであろう。
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