経済研究部 准主任研究員
斉藤 誠(さいとう まこと)
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
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1.1-3月期は前年同期比+3.5%
台湾の行政院主計総処(DGBAS)は4月30日、2015年1-3月期の実質域内総生産(GDP)の速報値を公表した。成長率は前年同期比(原系列)+3.5%と、前期(同+3.3%)から小幅に加速した。これは2月に行政院主計総処が公表した見通し(同+3.5%)、市場予想(同+3.5%)と一致する結果であった。
2.緩やかな成長も雲行きは怪しい
2015年1-3月期の成長率は緩やかな成長を記録したが、成長率を押し上げた純輸出は、輸出の拡大よりも輸入の伸び悩みの影響が大きい。また、内需は投資を中心に鈍化しており、これまで続いた輸出主導の安定成長は揺らぐ恐れがある。
世界経済は減速懸念が漂うが、台湾の得意分野のモバイル端末向けの半導体や光学レンズなどIT製品の需要は堅調であり、輸出は改善が続いた。また企業業績の改善を背景とする雇用・所得環境の改善や資源安の恩恵を受けて、個人消費は堅調だった。このように輸出が好調を維持するなかでは、輸出から内需への波及効果が生まれ、台湾経済は緩やかな成長を実現することができる。
しかし、スマートフォン需要は最大の中国市場を中心に伸び悩みつつある。また低中価格帯への需要が高まる中、台湾企業が供給する部品は中国企業の台頭もあり値下げ圧力が強まっている。米アップルの新製品の受託生産や部品供給は引き続き関連産業を牽引するだろうが、モノのインターネットやビックデータなど新たな需要が伸びないままでは潮目が変わりかねない。
この輸出の先行き不透明感は、今期の投資の減少と輸入の鈍化からも垣間見える。設備投資は、航空機の拡充が押し上げ要因となる一方で半導体企業が資本支出を減らすなど全体では減少した。輸入についても資本財・原材料は減少に転じている。こうした指標は、先行きの輸出の鈍化を予兆しているとも見られ、輸出が今後も好調を維持することができるか注意する必要があるだろう。
経済研究部 准主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職