米利上げ局面のユーロ相場を振り返る~金融市場の動き(5月号)

2015年05月01日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. (為替) 一般的に、利上げを行う国の通貨には上昇圧力がかかるため、過去の米利上げ局面ではユーロ安ドル高基調になったと考えられがちだが、必ずしもそうではない。ユーロ発足後の2回の米利上げ局面では、為替の動きがまちまちだったうえ、ともに金利差から考えられる為替の方向性とは逆の動きになった。過去の米利上げ局面では、ユーロの信認が大きく動いていたため、金利差よりも信認がユーロ相場を動かす原動力になっていたと考えられる。一方、今回は、ユーロの信認に大きな変動はなさそうであり、素直に米利上げに伴う独米金利差(独-米)のマイナス幅拡大を受けて、ユーロ安ドル高基調になりそうだ。ただし、賞味期限には注意が必要。ユーロ圏経済の前向きな動きや原油価格上昇で、ユーロ圏の物価が改善していけば、ECB量的緩和の出口への思惑が高まり、ユーロの下支え・反転材料になる。なお、今回米利上げ局面のユーロと円は、しばらく弱さ比べの様相になりそうだ。米利上げ後も、日欧ともに量的緩和を継続すると予想されるためだ。従って、米利上げ後の一定期間のユーロ円は変化が乏しいものになりそうだ。ただし、日銀の異次元緩和の方がより長期化するとみられるため、米利上げ局面の後半は緩やかな円安ユーロ高基調になると見ている。
  2. (日銀金融政策) 日銀は4月の2回の決定会合で現行の金融政策を維持した。4月末の会合では展望レポートの物価見通しを下方修正、物価目標達成時期を16年度前半へと後ズレさせたものの、物価の基調改善を理由に、現段階での追加緩和の必要性を否定した。
  3. (市場の動きと予想) 4月は円高ドル安となり、ユーロドルは上昇、長期金利はやや低下した。当面の為替は米経済指標次第だが、対円・対ユーロでのドルの持ち直しを予想。長期金利は、当面0.3%台を中心とするボックス圏での推移を予想している。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)