家計調査15年3月~駆け込み需要の反動で前年比大幅減も実勢は持ち直し

2015年05月01日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・実質消費水準指数は4ヵ月ぶりの上昇
・15年度入り後の賃金の伸びに過度の期待は禁物か

■要旨

総務省が5月1日に公表した家計調査によると、15年3月の実質消費支出は前年比▲10.6%の大幅減少となったが、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲12.0%、当社予想は同▲12.1%)を上回る結果となった。減少幅は2月の前年比▲2.9%から大きく拡大したが、前年3月が消費税率引き上げ前の駆け込み需要で前年比7.2%と急増していた反動によるところが大きく、前月比では2.4%と2ヵ月連続で増加した。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比3.3%(2月:同▲0.2%)と4ヵ月ぶりに上昇し、過去3ヵ月の落ち込み分を取り戻す高い伸びとなった。ただし、家計調査は月々の振れが大きい統計であるため、今月の結果だけで消費が回復軌道に乗ったと判断するのは早計だ。同指数を四半期ベースで見ると、14年4-6月期に前期比▲8.2%と急速に落ち込んだ後、7-9月期が同1.2%、10-12月期が同1.3%と持ち直していたが、15年1-3月期は同0.1%とほぼ横這いにとどまった。

15年3月の家計調査は強めの結果となったが、商業動態統計、その他の消費関連統計などの動きと合わせて考えると、現時点では個人消費の持ち直しは依然として緩やかにとどまっていると判断される。
ここにきて原油価格下落に伴う物価上昇率の低下によって、消費低迷の主因となってきた実質所得の押し下げ圧力は和らいでいるが、その一方で名目賃金が伸び悩んでいることが懸念材料だ。
3月末の時点では、毎月勤労統計の名目賃金は14年度入り後、前年比で1%程度の伸びとなっていたが、4/3に厚生労働省から調査対象事業所の入れ替えに伴う遡及改訂値が公表され、14年度入り後の伸び率は平均で▲0.4%下方修正された。特に、所定内給与については14年度に入ってから増加傾向となっていたものが、14年中は小幅な減少傾向、15年に入ってようやく小幅な増加に転じるという姿に改められた。
多くの企業で久しぶりにベースアップが実施された14年度の所定内給与は、雇用の非正規化が続いていることもあって、結局は前年比ほぼ横這いにとどまった。15年春闘では昨年を上回るベースアップが実現したため、15年度の賃金は14年度に比べれば伸びが高まることが予想されるが、過度の期待は禁物だろう。
現時点では、個人消費は実質所得の改善を主因として持ち直しの動きを続けると予想しているが、名目賃金の伸び悩みによって個人消費の回復が遅れるリスクは念頭に置いておく必要がある。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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