消費者物価(全国14年12月)~コアCPI上昇率は15年度入り後にいったんマイナスへ

2015年01月30日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・コアCPI上昇率(消費税の影響を除く)は0.5%まで低下
・ガソリン、灯油の下落率が前年比で二桁のマイナスに
・コアCPI上昇率は15年度入り後にはいったんマイナスへ


■要旨

総務省が1月30日に公表した消費者物価指数によると、14年12月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.5%(11月:同2.7%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。コアCPIを消費税の影響を除くベースでみると、4月は消費税率引き上げ分以上の値上げが行われたこともあり、前年比1.5%まで上昇率が高まったが、その後は鈍化傾向が続き、12月は前年比0.5%となった。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.01%(11月:0.10%)、食料(生鮮食品を除く)が0.23%(11月:0.25%)、その他が0.28%(11月:0.33%)であった(当研究所試算による消費税の影響を除くベース)。

ガソリン、灯油の下落率はすでに前年比で二桁のマイナスとなっているが、消費税率引き上げの影響が一巡する15年4月以降はマイナス幅が▲20%程度まで拡大することが見込まれる。一方、電気代、ガス代は燃料費調整が市場価格に遅れて反映されるため、3月までは値上げが続く見込みだが、その後は原油価格の大幅下落が反映されることにより上昇率が徐々に鈍化し、15年夏までには前年比でマイナスとなるだろう。コアCPI上昇率に対するエネルギーの寄与度(消費税の影響を除く)は14年12月の▲0.01%から15年夏頃にかけてマイナス幅が▲1%近くまで拡大する可能性が高い。

コアCPI上昇率鈍化の主因は原油価格下落に伴うエネルギー価格の上昇率低下だが、原油価格の影響を直接受けない品目についても伸び率は鈍化傾向にある。コアCPI上昇率のうち、エネルギー、食料(生鮮食品を除く)以外のその他による寄与は14年4月には0.60%(消費税の影響を除く)まで高まったが、12月には0.28%と0.3ポイント程度縮小している。消費増税後の景気減速に伴う需給の悪化によって企業が値上げをしにくい状況となっている可能性が高い。食料品を中心に円安によるコスト増を価格転嫁する動きが一部に見られるものの、エネルギー価格下落の影響がそれを大きく上回ること、需給要因による物価押し上げは当面期待できないことから、コアCPI上昇率(消費税の影響を除く)は鈍化傾向が続くことが見込まれる。
当研究所では原油価格(ドバイ)が足もとの1バレル=40ドル台半ばから15年央にかけて50ドル台半ばまで持ち直すことを想定しているが、コアCPI上昇率は14年度末にかけてほぼゼロ%となり、15年度入り後にはいったんマイナスとなる公算が大きい。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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