アップルのものづくり経営に学ぶ-創造性(製品企画開発力)と経済性(収益力)の両立の徹底追求

2013年05月09日

(百嶋 徹) 環境経営・CSR

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■見出し

1――はじめに
2――サプライチェーン改革に関わる考察
3――自社小売店舗網の構築に関わる考察
4――部品調達・生産委託と設備投資の考え方
5――世界を良くしたいという高い志が経営の原動力
6――日本企業へのインプリケーション


■introduction

米アップルは、2001年発売の携帯音楽プレーヤー「iPod」を皮切りに、スマートフォン「iPhone」、タブレット「iPad」など、人々のライフスタイルを豊かにする画期的な製品・サービスを相次いで開発・発売し、それらの大ヒットにより世界を代表するハイテク企業に躍進した。

しかし、アップルも順風満帆でここまで来たわけではない。90年代後半にパソコンのOSを巡る競争で米マイクロソフトの「Windows」に敗れ、パソコンの市場シェアを低下させ経営危機に陥った。未曾有の経営危機を受けて、経営方針を巡る対立などにより85年に同社を去った創業者のスティーブ・ジョブズ氏が97年に暫定CEO(最高経営責任者)に復帰した。アップルが経営危機を脱し、その後躍進できたことについては、ジョブズ氏がカリスマ性を持った時代を先取りするビジョナリーとして果たした役割を抜きには勿論語れないが、ジョブズ氏の経営哲学やビジョンを実現・実践すべく、あらゆる事業プロセスで徹底した「定石戦略」が組織的に追求されている点も見逃せない。

本稿では、後者の視点から、経済性(収益性)を犠牲にせずに製品企画開発における創造性を徹底追求する、アップルのものづくり経営の本質について、財務データや既存文献などの公開資料を基に考察する 。アップルの経営危機からの復権の軌跡は、業績不振に陥っている家電メーカーなど日本の製造業にとって、学ぶべきものが多いはずである。

社会研究部   上席研究員

百嶋 徹(ひゃくしま とおる)

研究領域:経営・ビジネス

研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、イノベーション、企業不動産(CRE)、オフィス戦略、AI・IOT・自動運転、スマートシティ、CSR・ESG経営

経歴

【職歴】
 1985年 株式会社野村総合研究所入社
 1995年 野村アセットマネジメント株式会社出向
 1998年 ニッセイ基礎研究所入社 産業調査部
 2001年 社会研究部門
 2013年7月より現職
 ・明治大学経営学部 特別招聘教授(2014年度~2016年度)
 
【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員
 ・(財)産業研究所・企業経営研究会委員(2007年)
 ・麗澤大学企業倫理研究センター・企業不動産研究会委員(2007年)
 ・国土交通省・合理的なCRE戦略の推進に関する研究会(CRE研究会) ワーキンググループ委員(2007年)
 ・公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会CREマネジメント研究部会委員(2013年~)

【受賞】
 ・日経金融新聞(現・日経ヴェリタス)及びInstitutional Investor誌 アナリストランキング 素材産業部門 第1位
  (1994年発表)
 ・第1回 日本ファシリティマネジメント大賞 奨励賞受賞(単行本『CRE(企業不動産)戦略と企業経営』)

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