生活研究部 上席研究員
久我 尚子(くが なおこ)
研究領域:暮らし
研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング
■見出し
1――捉えにくい若年層マーケット~マスメディア離れと価値観・ライフスタイルの変化
2――若年層のインターネット利用状況
3――若年層の商品・サービスの購買行動
4――まとめ
■introduction
かつて新商品の宣伝といえばテレビをはじめとしたマスメディアが圧倒的な強さを誇っていた。しかし、2000年代に入りインターネットや携帯電話が爆発的に普及し、さらにスマートフォンの利用も拡大する中では従来のマスメディア1の威力にも陰りがみえる。20~30代ではテレビやラジオ、新聞などの視聴時間が減少する一方、インターネットの視聴時間は、この5年間で2倍以上に増加している(図表1)。従来のマスメディアを用いた商品訴求は若年層には到達しにくくなっている。
若年層に対する商品訴求の難しさには、メディア利用の変化のほか、消費志向の変化もあるだろう。現在の若年層はクルマ離れやアルコール離れ、高級ブランド品離れなどと言われるように、かつての若者たちが好んでいたモノを必ずしも好まなくなっている。この背景には若年層の厳しい雇用情勢による購買力の低下という論調もある。しかし、既出レポート2に記載の通り、現在の若年層は確かに厳しい状況にあるものの、未婚化・晩婚化の進行により独身者が多く、自由になる額も比較的多いため、目先の所得には不自由していない。また、その消費生活もデフレや情報通信をはじめとした技術革新の恩恵を受けた満足度の高いものとなっている。よって、若年層の消費志向の変化は購買力の低下よりも、成熟した消費社会に生まれ育ったことによる価値観やライフスタイルの変化といった影響が大きいだろう。物心ついた頃から安価で良質なモノに囲まれ、多くの選択肢を持つことが、それぞれのモノに対する相対的な興味を低下させる可能性があるだろうし、多くの選択肢を持つことで価値観やライフスタイルは多様化する可能性もあるだろう。
現在の若年層は従来のマスメディアから離れ、インターネットの利用時間が増えている。価値観やライフスタイルも変化し、商品の訴求も従来のようには上手くいかなくなっている。実際のところ、若年層で増えるインターネットの利用状況はどうなっているのだろうか。また、若年層ではどのような要因が商品の購買行動を決定づけるのだろうか。本稿ではニッセイ基礎研究所による若年層を対象とした調査3より得られたデータを用いて、若年層として20~34歳の未婚男女のインターネット利用状況と購買行動の分析結果を報告する。
生活研究部 上席研究員
研究領域:暮らし
研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング
プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society