消費税率引上げと年金額改定の微妙な関係

2012年08月20日

(中嶋 邦夫) 公的年金

■見出し

1 ―― 矛盾をはらむ、一体改革における消費税と年金額の関係
2 ―― 物価の動向だけでは決まらない、現行の年金額改定ルール
3 ―― さらに微妙な、年金財政健全化策の影響
4 ―― 予測不能な政治状況と過去の経験
5 ―― 理解を深めた上で、消費税率の引上げを迎えたい

■introduction

消費税率の引上げを柱とする社会保障と税の一体改革関連法案が、参議院でも可決された。消費税率の引上げには、社会保障の財源を現役世代だけではなく高齢世代も負担するという側面がある。その一方で、今回政府が示した消費税率の引上げ分の使途には「消費税引上げに伴う社会保障支出の増」が含まれており、消費税率の引上げにあわせて年金額が引き上げられるような印象を受ける。
もし消費税率の引上げにあわせて年金額が引き上げられれば、前述の趣旨に反するという意見がある。しかし、現行の年金額の改定ルールは、以前のような「物価が上がったから年金額を上げる」という単純な仕組みではない。物価の変動だけでなく現役世代の賃金の変動を考慮したり、年金財政を健全化するために給付を抑制する仕組みがあるため、消費税率の引上げに対応して年金額が引き上げられるかは微妙な状況である。本稿では、このような消費税率引上げと年金額改定の関係を紹介する。

保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫(なかしま くにお)

研究領域:年金

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴

【職歴】
 1995年 日本生命保険相互会社入社
 2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
 2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

【社外委員等】
 ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
 ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
 ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
 ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

【加入団体等】
 ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
 ・博士(経済学)

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