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中国経済
人民元切り上げ論の背景と展望
2003年08月01日
(矢嶋 康次)
(伊藤 さゆり)
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近年、中国の躍進と日本の不振の原因を「元安」に求める論調がマスコミにおいて盛んに登場している。本レポートでは、中国の為替運営の変遷、さらに90年代の人民元の推移を概観し、最近の「元の切り上げ」論の背景、さらに今後の展望について検討を行う。
昨今「元の切り上げ」論は、とりわけ米国産業界から要求がエスカレートしている。米国がドル安を通じて経常収支赤字の削減を目指す場合、急速に貿易相手国として存在感を高めている中国および当該通貨・元の存在抜きには議論できない状況にある。
米国の経常赤字が2008年に名目GDP比で2%まで削減されるためには、元が現在の1ドル=8.3元から2008年末には4.4元程度と約50%の切り上げが必要との試算結果を得た。
中国国内の政治・経済情勢に鑑みれば、元の切り上げが「早期」に実現する可能性は低い。もしも元を急速かつ大幅に切り上げてしまえば、中国国内に存在する大きな経済格差を一段と拡大させてしまう恐れがあり、その結果、中国の政治的安定性が損なわれ、世界情勢の不安定化が引き起こされる可能性があるためである。
とは言え、米国ひいては世界各国における対中貿易の比重が高まっている現状において、中国の輸出増勢傾向が続く限り、長期的には元に対する大幅な切り上げは避けられないだろう。
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