ポスト巨大都市時代に向かう東京 -多元都市システム構築への試論(その1)都市化の進展と東京の脱地域化

1995年06月01日

(長田 守)

(篠原 二三夫)

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本レポートは、都市開発部が93年度および94年度に実施したテーマ研究の成果に基づき取りまとめたものである。今月号から次のように3回に分けて連載する。
      6月号(その1)都市化の進展と東京の脱地域化
      7月号(その2)東京一極集中構造の揺らぎと地域構造の多元化
      8月号(その3)都市づくり理念の見直しと多元都市システム構築への試論

私たちが今まさに住んでいるこの20世紀末の都市に、以前とは異なる質的変化のうねりが迫っている。本レポートは、このうねりを引き起こしている原動力の一つに都市のネットワーク化があり、また東京の巨大都市化は終りを迎え、新たな局面に入っているという認識に立ち、そこから巨大都市東京の実像に迫り、私たちが望む巨大都市後の東京の都市像を試論として提言するものである。

<要旨>

  1. 20世紀に入って顕著になった人口爆発、急激な都市化、工業化等は、農村から都市へと人口の大規模な社会移動を引起こし、人々のライフスタイルを変え、エネルギーや資源の飛躍的な消費も招いた。20世紀後半に入ると、人口800万人を越える巨大都市が続々と出現したが、東京の巨大都市化もその世界的都市化の一環である。しかし、開発途上国とは異なり、東京を始め先進諸国の巨大都市では既に人口増加は止まり、新たな都市化の局面に入っている。
  2. 巨大都市東京は、政治、経済、文化等様々な分野で都市活動を展開しているが、今日多種多様なネットワークの集合する場、いわばネットワークの多重極とも呼べる存在になっている。これが東京の都市活動そのものばかりか、その影響範囲も多様なものにし、一定の地域の枠内に収まらなくさせている。これは現代の先進諸国の大都市に共通して見られる変化「脱地域化」と呼ばれる特性である。
  3. 東京の脱地域化の現状を、人、物、情報の動きおよび産業活動等から分析すると、都市活動を支える多様なネットワークの存在が明らかである。それらのネッ卜ワークは一般的に広域化しているが、東京一極集中を強めながら同時に拠点の分散化を進めるという特徴を持つものが見られる。
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