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高市新政権が発足、円相場の行方を考える~マーケット・カルテ11月号

2025年10月22日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

月初、1ドル148円台前半でスタートしたドル円は、積極財政と金融緩和を志向するとされる高市早苗氏が自民党総裁に選出されたことを機に円安ドル高となり、10日に1ドル153円台前半に達した。一方、その後は公明党の連立離脱を受けて高市氏が首相に選出されない可能性が意識されたほか、米中対立懸念や米国の信用不安の高まりもあって円高に振れ、17日には一旦150円台前半まで戻す形に。しかし、下旬には、日本維新の会の連立入りによって21日に高市氏が首相に選出されたことを主因に再び円安に振れ、足元では151円台後半にある。

今後は新政権の政策スタンス・動向を見極める時間帯となる。円安要因となる新政権の「拡張的な財政スタンス・利上げに対する慎重姿勢」がどこまで顕在化するかがポイントとなる。まず財政については、これまでの高市氏の主張から、従来の政権より拡張的になるものの、党内の分断や市場への悪影響等を避けるため、極端な拡張策は採られないと見ている。また金融政策については、早急な利上げには難色を示すものの、物価高対策を無効化しかねない過度の円安を避けるため、利上げの継続方針自体は容認するだろう。日銀は来年1月に利上げを実施すると予想している。為替市場では、財政拡張観測による円安圧力は燻るものの、次第に日銀の利上げが円高圧力として台頭してくる。さらに、この間、関税等による雇用情勢悪化を受けてFRBが利下げ継続路線を採ることもドル安に働くため、3カ月後の水準は現状よりやや円高ドル安の149円前後と予想している。

月初1.6%台半ばでスタートした長期金利は、足元でも1.6%台半ばで推移している。月初に高市氏の自民党総裁選出を受けて、財政拡張懸念が高まったうえ、円安が進んだことで日銀の早期利上げ観測がやや持ち直し、10日には一時1.7%を付けた。しかし、その後は国内政治の不透明感から利上げ観測が後退したほか、米利下げ観測に伴う米金利低下が国内に波及し、やや低下した。

既述の通り、高市新政権でも極端な財政拡張策は採られないと見ているが、今後も拡張懸念が燻り続けて金利を下支えする。さらに、次第に日銀利上げ観測が高まることが金利上昇圧力になっていくだろう。3か月後の水準は1.7%強と見込んでいる。
 
(執筆時点:2025/10/22)

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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