若者が求める抜本的な年金改革に、どう向き合うか

2025年06月04日

抜本改革として、個人勘定による積立方式の導入を求める声が、若い世代を中心に出ている。ごく簡単に言えば、現在の厚生年金を廃止して、現在の個人型確定拠出年金(iDeCo)のような仕組みを公的年金にすべき、という意見である。
 
確かに、現在の公的年金制度には世代間の所得移転や世代内の所得再分配という社会連帯が組み込まれているため、自身の資産運用の結果で年金額が決まるiDeCoなどと比べて、複雑な仕組みと言える。加えて、既存の制度へ否応なしに加入させられることに対する、若い世代の違和感も理解できる。
 
とはいえ、若い世代の意見を政策目標として掲げるのが社会政策として正解とは限らない。人間には近視眼的な傾向があるため、若い時期ほど将来に受け取る年金の価値を軽視しがちである。
 
年金制度は「親のおせっかい」のようなものだと言われる。おせっかいを嫌がる子どもに「勝手にしろ」と言うべきか、嫌われてもおせっかいを続けるべきか。公的年金の給付水準を下げつつiDeCo等の優遇を進める現在の方向性が、中庸ではないだろうか。
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