中村 亮一()
研究領域:保険
研究・専門分野
E.4標準式と部分内部モデルの違い
ソルベンシーII PIMと標準式の方法論と前提の主な違いは、以下のリスクタイプによって説明されている。
市場リスク
信用リスクに関して、ソルベンシーII PIMショックは債券ポートフォリオに基づいて調整されるため、債券の固定金利リスクは異なる。標準式とは対照的に、内部モデルでは国債はショックを受ける。さらに、ソルベンシーII PIMはAegon the Netherland内で動的ボラティリティ調整アプローチを採用しているが、標準式は採用していない。
この動的ボラティリティ調整方法論は資産のみのアプローチに従い、スプレッドの拡大が厳しいシナリオであることを確実にしている。債券ポートフォリオのパフォーマンスは広範囲の信用シナリオの下で評価され、モデルは資産が経験した(短期)損失のどの部分を回収するかを決定する。
PIMの下で、Aegon the Netherlands は、EIOPA のVA参照ポートフォリオと自社の資産ポートフォリオとの間のベーシスリスクによって引き起こされるボラティリティを軽減する特性を有する内部モデルを使用している。
信用リスクの一部として、モーゲージについては、ソルベンシーII PIMにスプレッド・ショックが含まれているが、標準式にはカウンターパーティのデフォルトリスク・ショックが含まれている。
株式リスク・ショックは、Aegon自身のポートフォリオに基づいて調整される。さらに、株式エクスポージャーは株式ボラティリティリスクにもショックを受ける。
Aegon the Netherlands内では、不動産ポートフォリオに対する不動産リスクのショックは、標準式における25%のショックとは対照的に、ポートフォリオに対して具体的に較正されている。
為替リスクについては、ショックはAegon自身のポートフォリオに基づいて較正される。さらに、標準式では通貨エクスポージャー間に分散がないのとは対照的に、ソルベンシーII PIMでは異なる通貨へのエクスポージャー間で分散が認められている。
英国は非EEA国であり、再保険された外部ファンドリンクは無格付けの第三者によって保有されているため、当グループはカウンターパーティリスクに対して内部モデルを使用している。 内部モデルは、グループのこのリスクに対する資本要件が英国の資本要件と一致するように設定されている。
以下の理由により、金利リスクに関するソルベンシーII PIMの結果は、標準式の結果とは異なる。
・標準式の金利ショックは金利曲線の平行移動のみを考慮するが、ソルベンシーII PIMは平行移動だけでなく、金利曲線のフラットニング(平坦化)とツイスチィング(ねじれ)を考慮する。
・ソルベンシーII PIM金利カーブショックは、Aegonのポートフォリオに関連する過去の市場データに基づいて調整される。
・ソルベンシーII PIMは、ショック・シナリオでは終局フォワードレート(UFR)は変化しないと仮定しているが、標準式の金利ショックでは、UFRを含む曲線全体が移動すると仮定している。
・さらに、ソルベンシーII PIMには、金利ボラティリティリスクに対する所要自己資本が含まれている。そして
・Aegon UKの場合、ソルベンシーII PIMに基づく金利リスクには、給付金の支払い及び費用に対するインフレショックも含まれる。一方、標準式の下では、事業費のインフレショックは生命保険費用リスクに含まれる。
引受リスク
長寿リスク及び死亡リスクのソルベンシーII PIMは、標準式とは次のように異なる。
・ソルベンシーII PIMは、国民死亡率ショックと経験因子ショックを区別するが、標準式は全ての死亡率の一定の減少を仮定する。
・ソルベンシーII PIMは年齢と性別に死亡率を予測するが、標準式は全ての年齢と性別で同じショックを仮定する。
Aegon the Netherlandsの場合、ソルベンシーII PIMにはモーゲージポートフォリオの前払い(解約)リスクが含まれる。
ソルベンシーII PIMの下でのAegon UKの保険契約者の行動(解約)リスクは、パラメータと伝染ショックの総計だが、標準式では、パラメータと伝染ストレスのうち大きい方である。さらに、ショックはAegon UKポートフォリオで調整されているため、標準式よりも大きなショック規模になり、分散前のSCRが高くなる。
ソルベンシーII PIMのストレスは事業費レベル、トレンド及びボラティリティ・ストレスをカバーするため、Aegon UKの総計ソルベンシーII PIMの事業費リスク・ショックは標準式ストレスよりも高くなっている。これにより、分散化前のSCRが高くなる。
オペレーショナルリスク
Aegon UKの場合、オペレーショナルリスクに関するソルベンシーII PIMは、標準式とは次のように異なる。
・ソルベンシーII PIM は、対象分野の専門家の意見に基づいており、ワークショップを使用して経験データによって補足された可能なシナリオを生成する。 次に、標準式では技術的準備金、保険料、経費に基づいているのに対して、ソルベンシーII PIMのデータは確率モデルに適合している。
・ソルベンシーII PIMは、オペレーショナルリスクの分散化をまったく認めていない標準式とは対照的に、他のリスクタイプによるオペレーショナルリスクの分散化を可能にする。
分散化
ソルベンシーII PIMの内部モデルと標準式の構成要素の間の分散は、統合テクニック3(IT3)を使用して計算される。このEIOPA規定の統合テクニックは、内部モデルと標準式の構成要素との間のインプライド線形相関係数がどのように計算されるかを説明している。この相関係数は、平方根公式を使用して合計ソルベンシーII PIM SCRを計算するために使用される。標準式では、リスクモジュール別及び合計レベルで分散を計算するために、相関モジュールを使用する。
3―まとめ