中村 亮一()
研究領域:保険
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「E.4.3.内部モデルで使用される手法 分散効果」
相関行列と関連する周辺分布の前提によって生成される潜在的な分散化については、次のようにして発生する。
・異なる市場指数(例えば、株式市場はセクター別と地理的な指数の間である程度の分散化を保持している)
・異なるセグメント(分散化は、中長期的なキャッシュフロー及び市場の実現と保険契約者の行動との間の関連する相互作用を伴う生命保険事業ならびに短期的なエクスポージャー及び一般的には金利の動きからは反対の効果を有する損害保険事業との共同存在から発生する)
・異なる地域(伝播や相互作用の影響が限定された、異なる地域で販売されている損害保険事業及び生命保険事業)
・異なるビジネスモデル(例えば、保険契約者との利益分配の水準及びポートフォリオの関連する経営行動)・異なるリスク(例:異なるリスクの発生確率は同じではなく、その結果、共同イベントは100%未満の相関を持つ。例として、自然大災害イベントは金融市場イベントから独立しているが、その逆は当てはまらない)。
これら全ての要素は、関連する分散効果を生み出す一貫した方法でグループSCRに貢献している。
最後に、グループ部分内部モデルは、内部モデルの範囲と標準式の範囲との間の相互作用を評価するために、「2つの世界(two world)」のアプローチを利用する。規則で定義されているように、このアプローチでは、「2つの世界」の間で保守性を重視した分散化のメリットを享受できない(例えば、金利SCRが、標準式と比較した内部モデルに続く異なる経済シナリオにリンクしている場合)。
定量的な結果に関しては、セクションE.2で提供された情報に基づいて、地理、セグメント、ビジネスモデル、及び詳細なリスク・モジュールの間の分散が既にSCRリスクカテゴリに組み込まれていることを考慮して、主要なリスクカテゴリ間で生じる分散効果を図表にまとめている。
一般論として、金融イベントとクレジットイベントは互いに強く相関しており、限られた分散化を提供する(すなわち、金融とクレジットのストレスイベントが同時に発生する可能性が高い)ことは明らかである。生命保険及び健康保険の引受リスクは、主にバイオメトリックイベントによって引き起こされることを考えると、他のリスクカテゴリとの相関は弱い。 損害保険引受リスクは、金融イベント(イールドカーブの変動、インフレ、取引相手の信用力)と実質的に相関しており、これは示されている分散効果を説明している。最後に、オペレーショナルリスクは、他のどのリスク分類ともより分散化している。
分散効果
Avivaは、Avivaの構造、リスクの組み合わせ及び基礎となるリスクの調整と相関関係を考慮して、適用される分散化のレベルが妥当であることを保証するために、リスク及び事業単位毎に分散効果の分析を行う。
Avivaの報告によると、2021年12月31日現在のグループの分散効果は6,897百万ポンド(2020年:8,314百万ポンド)であり、これにはリスク要素間の分散及びPIMの分散化が含まれるが、各リスク要素内の分散は含まれない。2021年12月31日現在の分散率(diversification ratio)は、既にリスク要素内での分散化が考慮されている19,004百万ポンド(2020年:24,141百万ポンド)のSCRの36%(2020年:34%)となっている。
リスク間の分散効果は、主に相対的なリスクの規模とそれらの間の相関関係によってもたらされる。例えば、2つのリスクが同じ規模である場合、2つのリスクはより分散化し、相関性が高いほど、分散するリスクは少なくなる。分散化はまたリスク分布の形状によっても影響を受け、極端なイベントが発生する可能性が高いリスクは分散化の傾向が高い。
当グループ内の会社間で発生する分散効果の規模は、主にそれらの会社のリスクプロファイルによって左右される。リングフェンス型ファンド及び非保険会社は分散効果に貢献していない。つまり、英国の有配当ファンドからは分散効果は発生しない。内部モデル会社の中では、英国生命保険会社が当グループの大部分を占めているため、当グループのリスクプロファイルに強く影響を与える。損害保険事業は、他のグループとは異なるリスクプロファイルを持っているため、分散効果を有している。
分散化のメリットの最後の源泉は、PIMの分散化である。Avivaは、部分内部モデルを使用してグループSCRの合計を計算する。これには、内部モデル会社と標準式会社を別々にモデル化してから、相関行列を使用してそれらを結合する。
PIMの分散効果は、内部モデルブロックと標準式リスク・モジュールとの間の想定される相関関係から生じる。
その他の情報の章の附属I、S.25.02.22は、ソルベンシーII委任法第336条に規定されているように、分解されたSCRを概説している。
ソルベンシーII PIM SCR内の分散効果
ソルベンシーII PIMの下で、Aegonは国単位及びリスクタイプ間の分散効果を計算する。標準式の構成要素内では、規定されたSF相関行列に従って分散化が決定される。
内部モデル内では、過去のデータと専門家の判断を利用して、全てのリスク要因に対して限界確率分布関数が適合されている。組み合わされた全てのリスク要因の全体的な同時確率分布関数は、リスク間の依存構造を考慮に入れる。この共同分布からのサンプルをシミュレートする200万シナリオからの損失は、全体的な経験的損失分布関数を当てはめるために使用され、これから99.5%のポイントを取ることによって200年の1回の損失を導き出す。
シナリオはシナリオジェネレータと依存構造を使用して生成され、市場データと専門家の判断に基づくリスクドライバー間の依存関係(相関)が定義される。各シナリオには、金利、株式リターン、死亡率などのリスク要因の値が含まれている。
合計ネットSCR(分散効果反映後)は、自己資本における200年に1回の損失の平均によって決定される。分散はリスクタイプの独立型SCRの合計と合計ネットSCRの差として定義される。
ソルベンシーII PIMの内部モデルと標準式コンポーネントの間の分散は、ソルベンシーIIの規定に従って、統合テクニック3(IT3)を使用して計算される。
QRT S.25.02.22に示されている3,508百万ユーロ(2019年:3,050百万ユーロ)の分散化には、PIM SCRのSF部分とIM部分の統合及びリスクカテゴリ間の分散化が含まれるが、各リスク要素内の分散化は含まれない。
QRT S.25.02.22のリスクカテゴリ内では、主に次のように各リスクカテゴリ内に分散がある。分散は、内部モデルのリスクタイプ、SFリスクのタイプ、そして最後にIT3の集約によってもたらされる。 グループ全体の分散効果をもたらす様々なリスクタイプ間の相互作用の概要は以下のとおりである。
・市場リスクの分散化。スプレッドリスクと株式リスク間の分散、金利レベルと非市場リスクタイプの間の分散によって引き起こされる。Aegonは金利の低下にさらされているため、金利水準リスクに対する分散効果は比較的大きく、スプレッド拡大シナリオとの相関は低い。スプレッドリスク(スプレッド拡大へのエクスポージャー)はSCRの観点からはAegonにとって最大のリスクカテゴリであるため、スプレッドリスクの分散効果は比較的小さく、したがって200年に1回の事象で自己資本の総損失が発生する。これらの数値は全て動的ボラティリティ調整を適用した後のものである。
・保険引受リスク(UR)の分散化。これは、解約リスクなどの他の保険引受リスクとの相関が比較的低い長寿リスクによって引き起こされる。QRT S.25.02.22に報告され、一貫して上記の表に示されているような生命保険引受リスク。上の表に示されている金額は、引受リスク要素間の分散のみである。引受けリスクは、通常、スプレッドリスクのように、200年に1回のイベントで自己資本の総損失をもたらす市場リスクの種類とも相関が低い。
・その他の所要自己資本には、OFS事業体に加えて、控除合算法(D&A)の下での事業体(主に、米国の生命保険会社であるAegon Americas)に対する必要資本が含まれる。2020年の第4四半期に、Aegon BankはOFS事業体として含まれている。AC、OFS、D&A事業体間に分散効果はない。
3―まとめ