欧州大手保険Gの2021年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-

2022年05月26日

(中村 亮一) 保険計理

4|Aviva
(1)全体の状況
2021年の新契約価値(NBVは、複数国からの事業撤退による影響から2020年に比べて14.1%減少して、10.74億ポンドとなった。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))も、2020年から0.4%ポイント低下して1.9%となった。

新契約保険料現在価値(PVNBPは、英国とアイルランドにおける生命保険事業において21.8%進展したことから、グループ全体でも2020年に比べて9.7%増加して、462.02億ポンドとなった。
(2)新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別内訳(英国とアイルランドの生命保険事業)
英国とアイルランドにおける生命保険事業の新契約価値(NBV)、新契約保険料現在価値(PVNBP)及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りとなっている。

新契約価値(NBV)は、2019年から2020年にかけて横ばいだった貯蓄・退職や保障・医療で増加したものの、2020年に大きく増加した年金・エクイティリリースが大きく減少して2019年の水準に戻ったことから、全体でも若干減少した。

新契約保険料現在価値(PVNBP)は、貯蓄・退職で大きく増加した。

新契約マージン(対PVNBP)は、保障・医療等が7.9%と2020年に比べてさらに高い水準を確保したものの、年金・エクイティリリースが4.7%から3.6%に大きく低下したことから、全体でも2.3%から0.4%ポイント低下して、1.9%となった。
(3)新契約マージン(対PVNBP)の地域別状況 
新契約価値(NBV)及び新契約保険料現在価値(PVNBP)の地域別内訳は、以下の図表の通りとなっている。

英国とアイルランドの生命保険では、貯蓄・退職の高成長と過去最高の62億ポンドのBPA(bulk purchase annuities:バルク購入年金)を含む年金及びエクイティリリースの5%の成長に牽引され、新契約保険料現在価値(PVNBP)は21.8%進展して、356.25億ポンドとなった。一方で新契約価値(NBV)は、BPAマージンに対するスプレッド環境の低下の影響により、1%減少して6.68億ポンドになった。

国際投資は中国、シンガポール、インド等に関係しているが、新契約保険料現在価値(PVNBP)と新契約価値(NBV)とも未だ規模は小さいものの大幅に伸展した。
(参考)営業利益の商品タイプ別内訳
英国生命保険事業の営業利益の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りとなっている。

2021年は、貯蓄&退職や保障&医療が大きく増加したが、逆に年金・エクイティリリースは減少した。

ただし、2020年のグループ全体の営業利益のうち、年金・エクイティリリースが45%と引き続き高い水準を占めている。
5|Aegon
(1)全体の状況
2021年の新契約価値(MCVNB:Market consistent value of new business)は、2020年に比べて2倍以上に大幅に増加して、5.38億ユーロとなった。これは、主に米国での販売の増加と、金利に敏感な特約付の変額年金の販売を停止したことによる。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約年換算保険料APE)は、2020年に比べて0.1%ポイント低下して、9.8%となった。

新契約年換算保険料(APEも、2020年に比べて79.5%と大幅に増加して54.66億ユーロとなった。米国でのインデックス付きユニバーサルライフ及び終身最終費用商品の新規販売の増加等が貢献している。
(2)新契約価値(NBV)及び新契約年換算保険料(APE)の地域別状況
新契約価値(NBV)、新契約年換算保険料(APE)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

米州での事業の好調により、いずれの指標でも、2020年に比べて、米州の位置付けが高まっている。
(3)新契約マージンの地域別状況
新契約マージンの地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。
6|Zurich
(1)全体の状況
生命保険事業の2021年の新契約価値(NBVは、2020年に比べて22%増加(為替や買収や売却の調整を行った「同一条件ベース」では21%増加、以下同様)して、9.59億ドルとなった。EMEA(欧州・中東・アフリカ)及びラテンアメリカにおいて販売規模が拡大し、商品ミックスも改善したことによる。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約年換算保険料)は、2020年に比べて4.0%ポイント上昇(4.0%ポイント上昇)して、29.1%となった。

新契約年換算保険料(APEは、2020年に比べて5%増加(5%増加)して、38.24億ドルとなった。これは主に、貯蓄と年金が大きく減少したものの、ユニットリンク商品と保障商品が成長したことを反映している。

なお、Zurichは保障、ユニットリンク及び企業貯蓄商品に焦点を当てており、これらの商品でAPEの90%超、NBVの約75%を占めている。
(2)新契約マージン等の地域別状況
新契約年換算保険料(APE)と新契約マージン(対APE)の地域別内訳は、次ページの図表の通りとなっている。

新契約マージン(対APE)については、アジア・太平洋が52.7%で高い水準となっている。2020年との比較では、北米以外の地域では上昇した。北米では生命保険事業の売却の影響で減少した。

新契約年換算保険料(APE)については、2020年と比較して同様の基準で、EMEAでは7%増加した。これは主に、アイルランド、イタリア、スイスでのユニットリンク商品の好調な販売及びスペイン、スイス、英国における保障商品の好調による。一方で、ドイツとイタリアにおいては伝統的商品の販売が低調で、年初におけるCOVID-19による経済の低迷や競合的な市場状況によりスイスの企業貯蓄販売が減少した。ラテンアメリカでは、Zurich Santander での個人保障契約の売上高の増加及びチリやブラジルでのユニットリンク商品の販売が好調だった。一方でチリにおける大規模団体保障商品の非更新によるマイナスの影響もあった。アジア・太平洋地域では、日本、オーストラリア、インドネシアでの低調な販売により、APEは減少した。オーストラリアではマージンの改善のための価格改定の影響を受けた。北米では事業売却分を除いたベースではユニットリンク商品の成長により35%増加した。
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