2|GAAP調整アプローチ(GAAP Plus)
(1)概要-GAAP Plusの位置付け―
IAISは、KL合意セクション2.5に規定されているように、GAAP Plusの報告は、2019年のフィールドテストとICS Version 2.0の採択に続くモニタリング期間(2020年~2024年)のオプショナルなICS非開示報告の構成要素となることを決定した。KL合意は、GAAP PlusはICSの下で実行可能な選択肢のままであるが、監督者の要請に応じてのみ非開示報告に含まれると規定している。
また、IFRS及び米国GAAPに基づく一定の会計基準の変更は、GAAP Plusの設計に重要な影響を与える。これに対応して、IAISは米国及びIFRS GAAP Plusアプローチのフィールドテストを2年間、モニタリング期間(2020年と2021年)に延長することを決定した。これにより、米国GAAP及びIFRSの下でのボランティアグループの報告に、保険負債の評価、資産分類/測定及び信用減損に関連する新しい会計規則を採択し、IAISがこれらの新しいルールを考慮したGAAP Plusのアプローチを開発する時間を与えることになる。日本のGAAP Plusのタイムラインは影響を受けておらず、元のタイムラインと引き続き整合し、2019年のフィールドテストを終了し、2020年にモニタリングと非開示の報告を開始する。
(2)設計とアプローチ
GAAP Plusの出発点は、IFRS、米国又は日本のGAAP又はそれぞれのIAIGに適した法定ベースにかかわらず、監査された一般目的の連結グループ財務諸表である。
GAAP Plus(セクション7.4)に関する2018年フィールドテスト技術仕様書は、ICS GAAP Plus貸借対照表に到達するために必要な調整の概要を説明している。調整は、連結グループ報告の目的で使用される基礎となる管轄GAAPに基づいて異なる。各管轄GAAP Plusアプローチは、以下の原則に基づいて開発された。
・MAVアプローチと同様に、GAAP Plusで規定されている調整は、貸借対照表上の最も意味ある重要な項目、具体的には保険関連負債と投資資産のみに対処すべきである。比例原則が適用される。
・可能な限り、調整は、基礎となる監査済GAAP財務報告書の金額、あるいは独立した外部監査の対象となるプロセス及び/又はシステムから生じる金額に基づくべきである。その目的は、各IAIGの既存のGAAPベース、報告プロセス、関連する内部統制ならびに監査機能を所与として、実行可能でありかつ独立した保証のレベルで、必要な調整を導出することである。
・投資資産は、IAIGの監査済GAAP財務諸表の報告残高と一致する基準で評価されるべきである。
・保険負債(及び再保険資産/負債)は、IAIGの監査済GAAP財務諸表の報告残高と整合的なベースで評価され、既存の管轄GAAPとそれに由来する指示された調整を用いて、実行可能な程度まで、(ICP 14評価の下で定義されたように)現在推計を近似する割引キャッシュフローを作成するために、必要に応じて調整された基準で評価されるべきである(現在推計に関する追加の詳細情報についてはICP 14.8を参照のこと)。
・保険資産及び負債は、非経済的ボラティリティが最小限に抑えられるように一貫して扱われるべきである。会社間の比較可能性を達成するためには、特定の負債及び資産の評価をいくつかの管轄GAAPのために調整するために資本リソースを調整する必要がある。他の場合には、この目的は、保険負債を割り引くために使用される利回り曲線の調整を通じて達成される。
・自己資本と控除-資産と負債の一貫性のある取扱と非経済的ボラティリティに対処するために、管轄区域GAAPを調整するだけでなく、ICS資本に関する全ての調整は、他のアプローチと同様にGAAP Plusにも等しく適用する必要がある。
・税効果-繰延税金は、MAVアプローチの場合と同じ取扱にする必要がある。
なお、CDは、各項目の調整に対する考え方等を述べているが、ここでは「保険負債」に関する内容だけを報告する。さらに、日本のGAAP Plusに関しても説明されているが、ここでは報告しない。
保険負債は、保険コア原則14 - 評価(ICP 14)に記載されている現在推計の定義に適合するように調整される。GAAP Plus調整は、準備金に埋め込まれた不利な乖離に対するマージンや引当金を取り除き、全ての現在の情報を考慮に入れるために前提条件を更新する役目を果たす。MAVとは対照的に、GAAP Plusは、割引前提を所定の利回り曲線やレートで置き換えない。むしろ、各管轄区域において、どのような割引が実施されるべきかに関して特定することに、管轄区域のGAAP規則及び業界実務者(公認会計士及びアクチュアリー)に依存している。
GAAP Plusの下でこのアプローチをとることを決定する際に考慮されたトレードオフがある。異なる会計ルールを適用しているIAIGs間の比較可能性の欠如につながる可能性があるローカルGAAPが割引に対処する方法に違いがあるかもしれない。しかし、GAAP Plusの下では、ローカル割引アプローチを使用することによって生じる差異は、実際に適切であり、異なる管轄区域で観察される負債の性質及び貸借対照表の全体構造をよりよく反映する可能性があると主張されている。会計基準設定者が割引方法を定義する責任を負う。割引ルールの適用は、堅牢な保険数理上の基準及び監査実務によって支えられている。また、公的及びグループの法定報告の両方に対して単一の会計制度の使用を最大化することによって得られるコスト及び効率性を考慮する。
一定の保守的なガードレールが過度に積極的な割引前提を制限することを要求する可能性があることを認識しており、これはGAAP Plusの開発における次のステップである。GAAP Plusアプローチに不可欠なこのようなガードレールやその他の運用基準の設計と開発に関連する多くの疑問がある。
GAAP Plusの全体的な設計がまだ固まっていないため、これまで重要な議論はなされていないが、割引及びGAAP Plusに関連する保守的な制約の可能な設計を評価することが現時点で適切である可能性がある。IAISは、市場ベースの割引曲線の文脈で使用される長期フォワードレートの処方が可能であるか、又はブック利回りのブレンド・レートにおける再投資の仮定が適切か又は必要かを評価している。また、米国GAAP Plusに基づく有配当契約の割引に使用される配当ファンドの信用レートに関する指針の必要性、及び米国GAAP Plusに基づく再投資の前提とブック利回りのブレンド方法に関するガイダンスも考慮されている。そして、原則ベースの基準であり、割引率を設定するために複数の方法を認めているIFRS第17号-保険契約に関して、IAISは、実務の範囲を適切に狭めるガイダンスを提供する必要があるかどうかを評価している。これらの項目に関する具体的な議論は、後に続くGAAP Plus管轄アプローチに関する関連セクションに含まれている。しかし、このセクションでは一般的な質問が提供されている。
6―内部モデルの取扱