(4) 圧倒的な市民参加プロジェクト
筆者がかねてから提案しているもう一つの具体的なアイディアは、年齢や障がいの有無に関係なく、あらゆる人々の市民参加を促すプロジェクトである。具体的なアイディアは次の3つだ。
【鳴り響け1,000万台のピアノ】
日本は世界に誇るピアノ大国である。2014年の全国消費実態調査によれば、ピアノ・電子ピアノの世帯普及率は24.7%、世帯数は5,175万だから1,000万台を優に超えるピアノが一般家庭に保有されていることになる。学校やホール・劇場、その他の公共施設や商業施設などを含めると、その数はさらに増えるだろう。
そのピアノを使って、開会式や閉会式にあわせ、テーマソングを全国で1,000万人が奏でる、というのがこのアイディアである。学校はもちろん、劇場やホール、公共施設等のピアノに加え、家庭で埃を被っているアップライトピアノも調律し直せば、自宅に居ながら誰もがピアノで東京2020大会に参加できる。オリパラ教育の一環として、2020年春から全国の小中学校の音楽の授業に取り入れる、というのはどうだろう。
【第九、250万人の熱唱】
2020年はベートーベンの生誕250年にあたる。パラリンピックの開会式や閉会式にあわせ、全国で250万人が第九を熱唱する、という案はどうだろうか。周知のとおり第九はベートーベンが聴力を完全に失ってから作曲された。いわば障がいのあるアーティストが生み出した歴史的作品である。
「歓喜の歌」を日本各地で熱唱し、スポーツと芸術の両面からパラリンピックの理念を世界中にアピールするというのがこのアイディアの狙いである。250万人は生誕250年の語呂合わせであるが、1万人の第九(大阪城ホール)、5,000人の第九(国技館)などが日本各地で開催されていることを考えると、あながち無理な数字ではないはずだ。
プロアマ問わず、全国のオーケストラに参加してもらい、アリーナや公共ホールなどで同時演奏する。大会主催都市の東京都から、64年の東京五輪を機に創設された東京都交響楽団が音頭を取って、全国に働きかけることはできないだろうか。
【日本縦断BON DANCE】
日本で参加型の文化催事で最大規模のものと言えば盆踊りだろう。最近では近藤良平・コンドルズの振り付けで毎年池袋西口公園で開催される「にゅ~盆踊り」、東日本大震災の後、音楽家の大友良英らが立ち上げたPROJECT FUKUSHIMAで始まった「納涼!盆踊り」など、現代アーティストが中心になって始まったものもある。
新旧合わせ、北から南まで日本中の盆踊りを東京2020大会の記念行事とし、子どもやお年寄りはもちろん、障がいの有無や性差、国籍など関係なく、誰もが盆踊りを楽しんでいる様子を世界に発信することを文化プログラムにしてはどうかというのがこのアイディアである。8月のお盆はオリンピックとパラリンピックのインターバルで、両者をつなぐイベントにもなるはずだ。