地方公会計制度とその改革~その2 地方公会計制度改革の経緯と課題~

2018年03月20日

(神戸 雄堂)

■要旨
 
  • 本来地方公会計の果たすべき役割を踏まえると、現金主義・単式簿記による会計方式のみを前提とした地方公会計制度では不十分な面がある。そこで、総務省は現金主義・単式簿記による会計の補完として、発生主義・複式簿記による会計方式を推進する地方公会計の整備を行ってきた。
     
  • 総務省は、2015年に全ての地方公共団体において、複式簿記の導入と固定資産台帳の整備を前提とする統一的な基準による財務書類等を、原則として2015年度から2017年度までの3年間で作成し、予算編成等に積極的に活用するよう要請した。この統一的な基準による財務書類を作成することで、経年での比較分析や類似団体での比較分析が可能となり、住民へのわかりやすい財政情報の公表や限られた財源の有効活用にも寄与することが期待される。分析に用いられる指標の中でも、有形固定資産減価償却率(資産老朽化比率)は、公共インフラや公共施設の老朽化とその更新費用が問題視されている昨今において、特に重要性が高いと思われる。
     
  • しかし、2015年度決算時点での地方公共団体における財務書類作成状況は、統一的な基準による財務書類の作成自体は着実に進んでいるものの、本来の目的である公会計の活用にまでは至っていない団体が多くなっている。今後、公会計の活用は進んでいくと見られるが、住民が関心をもって閲覧し、かつ内容をきちんと理解できる財務書類をいかに提供していくかが課題となる。

■目次

1――地方公会計制度改革の経緯
2――統一的な基準による地方公会計
3――有形固定資産減価償却率による分析
4――統一的な基準による財務書類の活用状況
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