米税制改革の行方が相場の撹乱要因に~マーケット・カルテ12月号

2017年11月21日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

ドル円は11月初旬に一時114円台に乗せたが、米税制改革難航への警戒に伴うドル売りや株価の調整を受けたリスク回避的な円買いなどからやや下落し、足元は112円台後半にある。

今後の焦点は二つ。一つは米国の利上げ観測だ。12月の利上げはもはや既定路線であり、市場も織り込み済みだが、来年以降の利上げ織り込みはあまり進んでいない。今後は米景気が堅調に推移し、それが波及する形で物価も持ち直し傾向を示すことで、市場で先行きの利上げ織り込みが進み、ドル高圧力が高まってくるだろう。

一方、問題は米税制改革の行方だ。これが二つ目の焦点になる。上院での法案可決はハードルが高いうえ、可決したとしても、下院との一本化手続きという難題が待ち受ける。年内や来年の早い段階での成立は困難であり、先行き不透明感がドルの重石になりそうだ。3ヵ月後の水準は115円弱と見ている。ただし、もし税制改革が頓挫したり、大幅な先送りになったりすれば、急激なドル安進行もあり得る。

ユーロ円は、最近一進一退の展開が続いており、足元は132円台前半で推移。ユーロ圏の好調な景気がユーロ高圧力となる一方で、ドイツでの連立交渉決裂などの政治リスクがユーロ安圧力となっている。また、ECBは緩和の出口を急がない姿勢を強調しているため、金融政策面からのユーロ高圧力も抑制されている。この状況はしばらく続くと考えられ、ユーロ円は決め手に欠けるだろう。3ヵ月後の水準は現状比横ばい圏内と見ている。

長期金利は、11月に入ってやや低下し、足元は0.03%台で推移している。今後は利上げの織り込みに伴う米金利上昇を受けて、上昇圧力が波及する可能性が高いが、地政学リスクや米政治の不透明感などが上昇を抑制する。3ヵ月後は0.1%をやや下回る水準を予想している。
 
(執筆時点:2017/11/21)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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