景気ウォッチャー調査(17年10月)~景況感は好調を維持し、台風の影響は限定的~

2017年11月10日

(白波瀨 康雄)

3.景気の先行き判断DI(季節調整値):家計・企業・雇用関連の全分野で大幅に改善

先行き判断DI(季節調整値)は54.9(前月差+3.9ポイント)と2ヵ月ぶりに改善した。DIは、2013年12月の56.7以来3年10ヵ月ぶりの高水準となった。DIの内訳をみると、企業動向関連(前月差+3.4ポイント)、雇用関連(同+3.1ポイント)だけでなく、現状判断では大きく落ち込んだ家計動向関連(同+4.2ポイント)も大幅に改善しており、景況感の回復は全分野に広がっている。
家計動向関連では、「年末年始にかけて北朝鮮情勢が緊迫化することが懸念されるため、外国人観光客の客離れを心配している」(北海道・観光型ホテル)など北朝鮮情勢を不安視するコメントがみられたが、「株価が良い状態であり、富裕層がお金を使う機会が増えるのではないか。この先3か月も現在の良い状態が続くとみている」(東北・一般小売店[医薬品])や「株価の上昇に連動して、高額品の動きが良くなってきたことが、肌で感じられるようになっている」(近畿・百貨店)など株高による資産効果に期待するコメントも目立った。

企業動向関連では、「中国から輸入する原材料価格が上昇の見込みであるため、収益面に影響を与えそうである。製品への価格転嫁は難しく、厳しさが増していく」(中国・金属製品製造業)などコスト増加を懸念するコメントがあったが、「売上や単価が少しずつ上向いてきており、1年前に比べれば明らかに利益が改善してきている。客も価格重視から内容重視に少しずつ変わってきている」(北海道・コピーサービス業)など、徐々に商品価値に見合った価格への値上げも進んでいるようだ。一方、輸送業では、「年末を控え、徐々に件数、物量も増えてくると期待したいが、今のところは感じられない。人材確保のための募集費や給与、燃料費等の上昇による収益悪化など、先行きが心配である」(南関東・輸送業)といったコメントが多く、労働力不足や燃料費の上昇などを受けて先行きに対する不安が広がっている。

雇用関連では、「年末へ向けて求人数は引き続き増加するが、求職者の動きが鈍く、傾向は変わらない」(九州・職業安定所)や「求人は増加傾向で、求職者は減少傾向にあることから、今後も求人倍率は上昇すると見込まれる」(甲信越・職業安定所)など、引き続き労働需給の逼迫した状況が続くとするコメントが目立った。

景況感は、企業動向関連や雇用関連で一段と改善している。企業の受注は、好調なだけでなく、価格転嫁の動きも広がりがみられる。雇用に関しても、人手不足は依然として一部の業種で深刻だが、安定した雇用を確保しようと正社員の求人も増えている。家計動向関連も、台風の影響が剥落した先行きについては大幅な改善をみせており、今後も景況感は好調を維持しそうだ。
 
 

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