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追加された1分野5項目について
次に追加された分野・項目を確認する。図表-1の中で従来の内容に「1分野5項目」が追加され、その1分野とは「(6)介護業務支援」であり、5項目とは図表-1内に「●」で示された内容である。この追加された分野・項目には、厚生労働省の事業「平成28年度 介護ロボットのニーズ・シーズ連携協調協議会」における検討結果も反映されている。
初めに「分野」に着目すると追加及び新規追加が計2カ所ある。
その一つ目は「(4)見守り・
コミュニケーション」分野であるが、「コミュニケーション」というワードが従来の「見守り」に追加されている。これに対応する「項目」として「●高齢者とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器」が新たに追加された。この背景には、2016年度に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施した「介護分野におけるコミュニケーションロボットの活用に関する大規模実証試験」
2によって、高齢者等の日常生活における活動をコミュニケーションロボットの発話や対話などでサポートし促進する有効性が示唆されたことがあろう。
二つ目は上述した図表内の「(6)介護業務支援」の新設である。その内容は、ロボット介護機器の活用により得られた、様々な介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、提供された介護サービス内容の共有やその情報を介護記録システムやケアプラン作成システム等に連動可能とすることも目指されている。このケアプラン作成システムなどは、AI等の活用も示唆されていよう。
残る3つの新項目は以下のとおりである。
一つ目は「(2)移動支援」の最下段の項目であるが、その内容は高齢者の外出支援をサポートする装着型の移動支援機器となっている。一つのイメージとしては、高齢者の両下肢の外側にロボット技術を活用した(外骨格型)機器を装着し転倒予防の警報に注意しつつ歩行するシーンがあろう。
残る2項目は共に「(3)排泄支援」分野での新項目となっている。その一つは排泄予測機器である。この機器は排尿又は排便のタイミングを、ウェアラブルの小型センサー等で使用者の生体情報を検知、予測してトイレへ誘導する機器であり既に実用化している機器もある。排泄介助の最適化に向けて予測精度の高い機器開発などが目標となろう。残る1項目はロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作の支援機器となっている。そもそも排泄介助は介護者にとって負担が重いだけでなく、対象の被介護者自身にとっても可能な限り自身で行なう意向が強い行為でもある。
なお、経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」は2015年度より、前述のAMEDに委託し実施されている。今回の「重点分野」の改訂を受けて「平成29年度 ロボット介護機器開発・導入促進事業(開発補助事業)」に係る公募事業が公表(10月13日公表、締切11月13日)されている。研究期間は最長1年とされ、内容は2つある。その一つは今回追加された1分野5項目の介護現場のニーズに基づいた機器開発のフィージビリティスタディ・試作開発であり、残る一つは既存の5分野8項目の介護現場のニーズに基づいたロボット介護機器の改良開発である。
2 この事業は経済産業省がAMEDに委託(2015年度より)し実施されている「ロボット介護機器開発・導入促進事業」の一つである「基準策定・評価事業」において「ロボット介護機器開発に関する調査」としてとして実施された規模の大きな「実証試験」を指す。
2――「重点分野」の策定・改訂の意義と今後