前納割引利率については、つぎのような変遷がある。
大正期に創設され、昭和初期に多くの生保会社が導入した保険料前納制度については、生命保険経営学会を設立した森荘三郎博士により、1940年1月に生保29社にアンケート調査が行なわれている。
回答のあった27社中、保険料前納制度を導入している会社は15社と過半を占め、うち10社が前納割引利率を年4%としていた(最高6%、最低3.5%。なお当時から、前納割引利率の具体的数値を約款に明記していた会社があった)
13。
戦後の1950年11月の同様のアンケート調査では、回答した16社全社が保険料前納制度を導入しており、保険料前納制度がほぼ全社に普及していることがわかる。
前納割引利率は年4%とする会社が11社で、3%とする会社が2社、保険種類または前納期間により3%または4%に区分する会社が3社となっていた
14。
1963年1月時点の20社の生保約款の調査結果によれば、当時の予定利率(4%)にもとづき、前納割引利率について「年4分を下回ることはありません」と約款上規定する会社が5社あると指摘されており
15、こうした会社も含め、当時の前納割引利率は4%であったものと考えられる。
1982年当時においては、前納割引利率は4%、5%、5.5%、8%と各社区々となっていたが、前納積立利率は各社とも8%であった
16。
契約者からの預かり利率は、前納割引利率・前納積立利率、保険金据置利率、積立配当利率とも8%を最高水準として、1987年以降、市中金利の低下により下落の一途をたどっている。
すなわち、1987年には前納積立利率、配当積立利率は7%、保険金据置利率は6%と
17、1989年には配当積立利率は6.3%、前納積立利率は6%、保険金据置利率は5%
18となり、以降も低下を続けた(なお、給付金据置利率は1987年には7%、1989年には6%と、保険契約継続中の取扱いとして保険契約消滅後の取扱いである保険金据置利率より高く設定されている)。
13 森荘三郎「我国各社の資料による総合研究 保険料前納制度に就いて」『生命保険経営』第12巻第3号、1940年5月。なお当時の保険料前納制度では、現在の積立利率の概念はないか、積立利率と割引利率は同率とされ、割引利率以上の運用に対する還元を行なっていた会社は2社に過ぎない。
14 森荘三郎「我国各社の資料による総合研究 保険料前納の事務について」『生命保険経営』第19巻第3号、1951年5月。
15 約款研究委員会「わが国生保会社の保険約款の総合比較(その2)」『生命保険経営』第31巻第4号、1963年7月。
16 日本生命『約款解説書』268ページ、1982年10月。
17 荒井昭「昭和61年度決算に基づく契約者配当について」『生命保険経営』第55巻第4号、1987年7月。
18 今村進「昭和63年度決算に基づく契約者配当について」『生命保険経営』第57巻第4号、1989年7月。
4――預かり利率の開示状況