オープンしてからこの間、入居者も少し入れ替わり、落合さん自身も最近、パートナーを得たのを機に近くのマンションに引っ越した。相手は一緒にコトナハウスに入居していた方だ。現在は2人でコトナハウスの運営に携わっている。
落合さんは、オープンから約2年経過して、「コトナハウスに行くことが楽しいと思ってくれる人が増えてきた。居心地よく過ごせる場になってきた」と評価する。商店街の人にもようやく知られるようになってきたという。商店街の新年会をコトナハウスで実施するなど、商店街一員としての配慮も怠らない。
チャノマ―のひとりLさんは、「チャノマを開けていると、近所の子どもが来たり、親子連れがフラッと入ってきたり。入ってこなくても、立ち止まって覗いていく人がいて、商店街の空気を動かしている」と教えてくれた。
住人のYさんは、「外から帰ってくると、いつも誰かいるし、初めて会う人も多いので、毎日ワクワクしながら暮らしている」、「ここに住んで人とのつながりが広がった。住んでいなかったらそれはなかったと思う。コトナハウスは、縁をつなぐ場所、広げてくれる場所だ」と話してくれた。
こうして話しを伺うと、共助の関係に前向きな住人が、チャノマで育まれた共感コミュニティを通じて、実際に多様なつながりを得ていることが分かる。今後、コトナハウスを出てからも近くに暮らし、地域の担い手になっていくのだろうか。現在の入居者は全員20代で単身。学生もいるため、この先ダイレクトに地域の担い手として活躍する姿は描きにくい。
しかし、落合さんとパートナーがそうであるように、いずれ愛着を持ったこの地で世帯形成し、地域の担い手となる住人も登場するのではないかと感じる。
落合さん自身は、けっして地域をよくしたいと思ってコトナハウスを始めたわけではない。落合さんが、「みんなが楽しんでくれる顔が、私の幸せ」と言うように、いわば、自分自身のためにしたことで、ここに集う人を楽しませている。その状況が、地域の雰囲気を明るくすることにつながっているのではないか。Lさんが、「商店街の空気を動かしている」と表現したのはそのことだと思う。
自分の興味関心で始めたことが、人のためにもなり、地域にも好ましい影響を与える。運営する人、利用する人、地域の人の3者にとって幸福な状況をつくろうとしている。それを始めた落合さんは、既に新たな地域の担い手と言えるだろう。住人とチャノマ-も、チャノマの運営を通して、共感コミュニティを育んでいる点で、新たな地域の担い手と考えていいのではないか。
だからこそ、いったんコトナハウスを巣立ったとしても、今度はチャノマ-として運営に参加する、あるいは、また別の共感コミュニティをつくるなどして、住人が新たな地域の担い手となっていくことは、十分期待できると思うのである。