アメリカのコインには、必ず"In God We Trust"と書かれている。これはさまざまな場面に登場するアメリカのモットーで、アメリカらしさを感じる文言だ。よく見るとアメリカのコインには、もうひとつ必ず刻まれている言葉がある。"E PLURIBUS UNUM"(エ・プルリブス・ウヌム)というラテン語で、意味は「多数からひとつへ」というアメリカ合衆国建国の理念を表した言葉だ。
先日発足したアメリカ・トランプ新政権は、移民の排斥や保護主義に傾いている。アメリカのコインに刻まれた建国の理念はどうなったのだろうか。行き過ぎた自国第一主義は、「自撮り」モードの自分の鏡像を客観的自画像と取り違える危うさをはらんでいるように思えてならない。イギリスが離脱を表明したEUも、創設の理念は"Unity in Diversity"(多様性の中の統合)だ。21世紀はグローバル化の進展が国民国家の分断を招き、基本的価値観の共有さえも揺るがす時代なのかもしれない。