・2007年8月~2012年11月(金融危機・低迷期)
金利要因は有意とはならず、その係数も0.052と小さい。当期間は金利ファクターの影響がほとんど見られない。モデルの説明力は60%程度と高いが、その大宗が株式市場要因によるものである。また不動産市場要因のt値が有意となった。当期間は、金融危機の影響で不動産市況が悪化しており、インプライド・キャップレートの上昇に寄与していたことが示唆される。また信用市場要因の説明力が弱いが、当期間はTOPIXとMarkit iTraxx Japan 5年の相関が高かったため、有意に推定されなかったものと考えられる。
・2012年12月~2016年7月(アベノミクス・異次元緩和期)
金利要因は有意となり、その係数は1.076と大きい。これは10年債利回りが1%低下すると、インプライド・キャップレートが1.076%低下することを示している。足元で両者が平行に低下している現状と整合的であり、金利低下が足元の不動産投資利回り低下の主因であったことが確認された。また同時に、現在は金利感応度が高く、金利上昇に対して不動産投資市場が脆弱な局面だということも示唆される。当期間は信用市場要因のt値が有意だが、係数の符号が想定と逆である。当期間はTOPIXとMarkit iTraxx Japan 5年の相関が高かったためである。またモデルの説明力は、約50%と比較的良好である。