要介護者等の増加
1にともなって介護の担い手も増加
2するなか、2015年11月には、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」実現に向けた「新・三本の矢」の一つとして、介護離職ゼロを目指す「安心につながる社会保障」が打ち出された
3。また、2016年3月には、育児・介護休業法の改正を含む雇用保険法等の改正案が第190回国会で成立し、改正育児・介護休業法については2017年1月に施行される運びとなった
4。改正育児・介護休業法のうち、介護に関連する部分としては、法定の介護休業(93日)の分割取得(3回を上限)、介護休暇の半日単位の取得、介護のための勤務時間短縮等の措置利用の柔軟化(3年の間で2回以上の利用)、介護終了までの残業免除が盛り込まれている。
このような動きのなか、自社の仕事と介護の両立支援のあり方を、改めて見直そうとしている企業に朗報がある。先日、厚生労働省HPに、「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル【事業主向け】」と「仕事と介護の両立モデル~介護離職を防ぐために~【労働者向け】」が公開された(
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html)
5。
仕事と介護の両立支援の取組としては、「1従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握」「2制度設計・見直し」「3介護に直面する前の従業員への支援」「4介護に直面した従業員への支援」「5働き方改革」が柱となる。「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル【事業主向け】」においては、これらの柱それぞれについて、以下のような、企業が仕事と介護の両立支援の取組を進めていくうえでの「お役立ちツール」が盛り込まれている。
【1】<従業員用>実態把握調査票
従業員の介護経験の有無や介護に対する不安、両立支援制度や介護保険制度の認知状況を、人事担当者等が把握するための調査票。
【2】<人事用>「『仕事と介護の両立支援制度』を周知しよう」チェックリスト
仕事と介護の両立支援制度を従業員に周知徹底するために、人事担当者が取り組むべき点についてのチェックリスト。
【3】<人事用>社内研修:「仕事と介護の両立セミナー」テキスト
主に介護に直面する前の従業員に対して、仕事と介護の両立のためのポイント等、事前に知っておくべき情報を伝えるための社内研修用テキスト。
【4】<従業員用>研修実施後のフォローアップ調査票
【3】の社内研修や【5】のリーフレットの効果を、人事担当者がフォローアップするための調査票。
【5】<従業員用>「仕事と介護の両立準備ガイド」リーフレット
主に介護に直面する前の従業員に対して、仕事と介護の両立のためのポイント等、事前に知っておくべき情報を伝えるためのリーフレット。社内研修に参加できない従業員も含めて、広く配布・周知しやすい。
【6】<従業員用>「親が元気なうちから把握しておくべきこと」チェックリスト
介護に直面する前に、従業員が親の状況等を確認・記録するためのチェックリスト。親や他の家族と一緒に、将来の親の介護について考えるためのツールとしても利用できる。
【7】<人事・管理職用>「従業員から介護に関する相談を受けた際に対応すべきこと」チェックリスト
介護に直面した従業員等から、仕事と介護の両立について相談を受けた際に、人事担当者や管理職が対応すべき点についてのチェックリスト。
【8】<従業員用>「ケアマネジャーに相談する際に確認しておくべきこと」チェックリスト
仕事と介護の両立において重要な役割を担うケアマネジャーに対して、伝えるべき情報、確認すべき情報をまとめたチェックリスト。介護を担う従業員を支援するケアマネジャーと人事担当者をつなぐツール(勤務先の両立支援制度を、従業員を介して人事担当者からケアマネジャーに伝えることができる等)でもある。
【9】<管理職用>「働き方の工夫を考えよう」チェックリスト
仕事と介護の両立に不可欠となる、職場での働き方の工夫について、管理職が取り組むべきポイントをまとめたチェックリスト。
これらは全て、企業が社内の状況に応じて一部カスタマイズできるよう、ワードファイルやパワーポイントファイルでもダウンロードできるようになっている。もちろん、著作権は厚生労働省にあるので、利用規約(
http://www.mhlw.go.jp/chosakuken/)を遵守したうえで活用する必要があるが、これらの「お役立ちツール」は、企業が仕事と介護の両立支援を効果的に進めていくうえで、文字通り大いに「役立つ」こととなろう。
また、「仕事と介護の両立モデル~介護離職を防ぐために~【労働者向け】」は、実際に仕事と介護を両立している従業員に関する複数の事例が紹介されており、両立のための「生きた」工夫がふんだんに盛り込まれている。仕事と介護をどのように両立すればよいのかイメージできない、というような従業員に対する支援ツールとしても、有効に活用できると考えられる。